雨に唄えば
2011/12/18鑑賞
@シネマパレット
面白かった!最高!
ダンスも最高だし、コメディとしても非常に笑えました。また、いろいろな映画の影響元が見えたのもうれしかったです。また、意外にもメタフィクショナルな言及が多いことで実験的な印象さえうけました。このあたり、フランス映画『天井桟敷の人々』(’46)からのえいきょうかもしれません。
この作品の主人公、ドン・ロックウェル(ジーン・ケリー)は、冒頭でインタビューに虚構で応える一方で、苦労した下積み時代が描かれるように、本当の自分を隠して成功した男である。
彼は確かにショウビジネスの世界でひとかどの地位を得ているものの、決して満足しているわけではないだろう。それを具現化しているのがリナという存在である。
そんな彼らの状況が、トーキー映画の流行により危うくさせられるが・・・というのが、この物語をひっぱる状況である。
当時のサイレント映画にあった高尚性に対して、芸人時代に培った技術(それは粗野なものとされている)によりまったく新たな表現を生み出すことでSucker Punch(思わぬ反撃)を与えるという意味で、ロックウェルたちはパイオニアである。彼らをとりまく状況や技術は或る意味クエンティン・タランティーノの手法にも近いものであり、この映画、もしかすると『映画秘宝』読者にもアピールする力が強いんじゃないかと思った。
また、ジーン・ケリーの「本当の自分を理解されたい」という願望を受け止めてくれるのがキャシー(デビー・レイノルズ)という先進的な考え方をもった女性であり、彼女はミューズといってもいい。有名な雨のシーンは、本当に自分の事をわかってくれる人間が現れたという喜びの発露であり、感情をあそこまで全身で表現できる男性は確かにカッコいいと思いました。
後半は本筋とあまり関連しない「ブロードウェイ・メロディ」が明らかに冗長だったり、リナという女性の処理に少し不満が残った。
そもそも、リナはサイレント映画時代ハリウッドの古い価値観を象徴する存在である。だから、後半になって凡庸な悪役として描かれてしまうのはどうかと思った。
しかしながら、何よりもすべてが観ていて気持ちのいいダンスシーン(序盤のドナルド・オコナーの動きはすごい!)や、それまでのキャラ設定が効いてくることで笑えてくる正統派なコメディシーンなど、魅力に溢れた作品です。
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