OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

ピラニア(2010)(★★★★★)

2011/12/25鑑賞

DVD



 アレクサンドル・アジャ監督のモンスター映画。もともとは3Dで公開されたもの。沖縄では公開されなかったため普通に2Dで鑑賞。これは3Dで観たかった。



 観ていて思ったのは、ホラー映画以上に道徳的な話はないのではないかということだ。
 ホラー映画で最初にセックスをしたカップルは殺される。初出は『13日の金曜日』あたりだろうが、ここには潔癖なまでの道徳的な思想が見て取れる。
 そういった要素を極限まで突き詰めていったところに本作の面白さはあるのではないかと思った。


 そういったことで考えると、ホラー映画を観ていれば(こういった言い方はひどいが)死んでいい人間とそうでない人間が明確に分かれてくるのが面白い。
 まず、どれだけホラー映画が好きな人間でも子供は絶対死んじゃダメだと思っている人は多いだろう。
 一方で、例えばオープニングで死んだマシュー(リチャード・ドレイファス)や、探索隊の人たちはどれだけ善良な人間であれ、劇中で殺されても胸は痛まない。
「Spring Break」で盛り上がっているヤローどもなど、その殺され方に喝采を送るだろう。
 
 けれども、それを「リア充爆発しろ!もしくは魚に食われちまえ」心情とだけで説明すると抜け落ちてしまう何かがあるように思う。そこを流れる論理というのは、「俗悪」に対する嫌悪と憧憬の入り混じった感情だ。
 前半でwild wild girlであるダニーとクリスタルに関して、全裸で水中遊泳するシーンが長々と映される。アホだなーと思いつつ、ここで彼女たちの役割は一度終わっている。つまり、裸になったことにより彼女たちは劇中で殺されてもいいキャラクターになった。
 劇中にはひとり俗悪を絵にかいたような男が出てくるが、彼の殺され方や最期、そして○○○の扱いといい、彼を殺すことでカタルシスが生じる作りになっている。
 一方で、ヌードを見せなかったケリー(ジョシカ・ゾア)などは主人公が彼女に特別な感情を持っていることもあるが、観客にとって「殺されてはいけないキャラクター」になっている。だからこそ、彼女のピンチは実にハラハラドキドキするのだ。 
(ちなみに、犠牲となった善良であっただろうキャラクターについては感情移入する前ということもあってどうにか受け流せるくらいにはなっている)



 さて、ここには、性的なものの解放に関しての複雑な思いがある。
 そりゃ、誰だってエロいものは観たいし、エロいことはしたい。けれども、それを享受するには自分の中にある一種の倫理が障壁となっている(気がする)。
 一方で、そんな障壁など存在しない人間(内面のない人間といってもいいかもしれない)は何も悩むことなくそれを享受している。そんな妬み。
 そういった思いを具現化したものが「ピラニア」なんじゃないかなと思った。

 この映画内で最も「殺されていいキャラクターたち」が、浜辺で何も知らずにパーティーに興じている若者であることは誰も否定しないだろう。この場面では、監督は「誰も今までに映像にしたことなかった死に方」を次々とみせていて非常に面白かった。

ピラニア [DVD]

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