幕末太陽傳('58/川島雄三)(★★★★★)
2012/1/1鑑賞
@桜坂劇場Cホール
今年の映画初めにしようと考えていた作品。
今までにも何回か観ているが観るたびに新たな発見のある作品。オールタイムベスト級。
僕はこの映画はロックンロールでありパンクでありヒップホップであると思っています。
まず、この映画のやかましさ。これはまさにロックンロールに通じるものだ。
そして居残り佐平次の型ハズレな行動。これはまさにパンクだ。
最後に、手法として落語から引用しながらも、佐平次のキャラクターでもって一貫した線を持たせてしまう力強さ。これはヒップホップの手法である。
加えて言うなら、「品川心中」からの引用箇所の小沢昭一のアドリブ演技はジャズだと思う。
この中でもとくにヒップホップ的な部分が面白い。まさに現代的な作品だと思う。
例えば、異なるシチュエーションにいる登場人物のシーンとシーンを、咳であるとか、あと言葉の一部が重なっていたりだとか、そういった手法でつなぐのはタランティーノの40年先を行っている。
ストーリーとか、明らかに登場人物が多くて、エピソードも多いし煩雑になりそうなものなんだけれども、こういったスタイリッシュな手法もあって楽しく観ていられるんだ。粋な台詞も多いし。
そして、この映画のどこが面白いかって、やはりフランキー堺演じる居残り佐平次のキャラクターだ。
まず、痛快!
本当にさあ、この映画が『スティング』より20年先に作られているのが信じられないくらいなんだけど。
ひたすら口がうまくて、人の心理を読むのに長けていて、すべてを見通すような観察眼で持って長期的に最大限の効果を出しそうな手を生み出す。それこそ、詐欺師映画に出てきそうなキャラクターであるわけですよ。
一方で、人情味あるのかな?いや、ないのかな?という印象も抱かせて、観客ともども騙されてしまう。でも、騙された側も不思議と不快にならない。こんなキャラクター古今東西探してもそうはいないでしょう。
また、彼のキャラクターを評する上で重要なのが、彼が肺病を抱えていること。
例えば、安い脚本ならこの病気設定を詐欺師的性格に照らし合わせて彼にドラマを作ろうとすると思うんです。でもこの映画ではそうはしない。だから、彼の痛快な活躍を楽しみつつも、時折挟み込まれる咳によりちょっと切ない感じになって、それでも生き続ける彼のしぶとさに拍手を送りたくなるんです。
それぞれが分断されているからこそ、逆に有機的なつながりが生まれる。実に稀有な設定だと思いませんか?
例えば宮藤官九郎のドラマ『タイガー&ドラゴン』あたりはこの映画が作られなければ決して生まれなかったであろう作品だと思います。そういった意味で、現在の人にも訴求する力は証明されているというのも過言ではありません。心からオススメします。
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