OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

電人ザボーガー(★★★★★)


2012/2/5鑑賞

桜坂劇場Aホール


 井口昇監督の新作。1970年代に放映された特撮番組『電人ザボーガー』のリメイク。もちろんそこは井口監督なので単なるリメイクには留まらず、板尾創治主演の第2部(成熟期)が設置されていたりはするものの、きちんと特撮のフォーマットにのっとって着地しているところが好感を持ちました。



 それにしても、井口監督の映画を見終わったあとはなぜこんなにもハッピーな気分になれるのだろう。確かに結構グロい描写とか(今回は控えめだったが)、性的なシーンなどが見て取れるのだけれども、きっと本人の性格の良さが出ているんだろうなと思った。

 まずね、オープニングでザボーガーとミスボーグ(山崎真実)一味の格闘シーンが描かれるのだけれども、ここでの演技とか台詞とかアクションとか、そういったものが「ザ・特撮!!」といった感じでさ。僕等が頭の中で思い描く特撮とはまさにこの通りだという感じでうれしくなった。ここできちんと特撮をやっているから、後々に特撮を逸脱する展開が効いてくるんだよな。

 あと、少し気になったのが、特撮作品に出てくる悪役女性ってなぜこんなに魅力的なんだろうということ。山崎真実は『シーサイドモーテル』で観た時に結構性格の悪い女性役がハマっていたんだけれども、この作品も彼女の背が高くグンバツなスタイルがミスボーグというキャラクターにマッチしていた。

 その後、主人公・大門豊(古原靖久)とミスボーグは特撮作品としてはありえない或る行動に出る。余談だけど子供連れの人とかもいたから他人事ながら心配になった。



 それから第一部は一応の収束を見せるも、そこで解決されなかった各キャラクター間の思いがサイボーグ・AKIKO(佐津川愛美)を媒介にして繋がっていき、解決を見せる。

 個人的には、後半のラストバトルはちょっと解決すべき問題が多すぎたせいか、ちょっともたついた印象をうけてしまった。

 それでも、ラストの板尾さんの笑顔を見ていると、彼の進む正義の道は決して100%正しいとは言いきれないにも関わらず、彼はシアワセなんだろうなと思えてきた。



 あとは、やっぱりタマフルで放送作家の高橋洋二さんも指摘していたエンドロールで流れるリメイク元の『電人ザボーガー』の映像。え、あれ原作に忠実だったんだ?という驚きがある。

 むしろ、井口昇監督の作風に『電人ザボーガー』の与えた影響というのは大きかったんだろうな。そういった意味でも、井口昇さんの良心を感じました。

 隣に座っていたおじさんがハンカチで涙をぬぐっていたのも、幸せな後味をもひとつ添えてくれた気がしました。