OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

ヤング≒アダルト(★★★☆☆)


2012/3/9鑑賞

@ミハマ7プレックス



 ジェイソン・ライトマン新作。シャーリーズ・セロン主演。

 ライトマン監督作を見るのは『マイレージ・マイライフ』(’10)に続き2作目で、個人的には『マイレージ〜』にあった着地点とは異なっていることが、自分にとって初見では腑に落ちないところだった。

 ただ、後に述べる考察から、もう一回鑑賞すれば★の数が変わってくるかもしれないと思っている。



 僕が事前に持っていたデータは、「オープニングでTeenage Fanclubの「The Concept」がかかるぞ」ということだった。ティーンエイジ・ファンクラブ!しかもあの名曲が!『アップサイド・ダウン』('11)でも効果的に使われていたあの、爽やかさと解放感と切なさが同居するあの曲がオープニングでかかるなんて、絶対に名作に違いないと思い映画館に出かけた。

 この曲が使われるシチュエーションというのは元カレから昔もらったテープに入っていた曲ということなのだが、主人公メイビスは故郷に帰る車の中でこのテープをかける。しかし、最初は曲の途中から入る。えっ?あのイントロが素晴らしいのに・・・。気を取り直して最初からかけるも、愛犬にオシッコさせるため中断。こんな感じで、「The Concept」のもたらす効果を排除している。

 これはおそらく意図的なことだ。この曲がフルコーラスでかかるのは中盤以降。しかも"I didn't wanto to hurt you"(ぼくは君を傷つけたくなかったんだ)という歌詞が皮肉に聞こえる場所でかかるのだから。



 かように、映画としてのルックは一見健全なのだけれども、毒があるというか、しかもその毒はかなり強いもので、一種の「絶望」といってもいいかもしれない。『マイレージ〜』にはまだ「希望」があった気がしたのだが、この映画には「希望」をほとんど感じることができなかった。



 それが、つまりは本作にも『マイレージ〜』同様後半にどんでん返しがあるのだけれども、『マイレージ〜』は「希望」を観客も共有していたゆえの衝撃も大きいのだけれど、本作では観客と「希望」が共有できていないから、ひたすらイタがるしかできない。

 

「希望」のない映画が悪いとは言わないけれど、いまの自分の心境にはあっていなかった。それだけです。

 



※ネタバレ含む




 帰りの車の中で思ったこと。

 この映画の基本設定として、「ハイスクール時代に全盛期だった主人公。だが今や37歳バツイチ独身。覆面作家の仕事も打ち切られそう。そんな彼女が元カレから届いたメールをきっかけにあの頃の輝きを取り戻すべく奔走する」というのがある。

 けれども、もしかするとこの時点で疑ってかかる必要があるのかもしれない。

 まず、安っぽいドラマにならないためかもしれないが、回想シーンがフェイドインされることはない。

 唯一彼女を称賛するのは、学生時代イケてないグループに属していたマット(パットン・オズワルド)だけ。

 あとは、彼女に対して、少なくとも「タカビー女」(どうでもいいが他に表現は無かったのか?戸田奈津子さんよ・・・)という評価は出てくるものの、イケてるグループに属していた面々の口から好ましい評価が出てくることはない。

 僕の考えだと、メイビスは確かに表面上はイケてるグループに属していたのかもしれないが、結局そこにはなじめなかった、微妙なポジションなのではなかろうか。わかりやすいたとえで言えば『ヘザース ベロニカの熱い日々』('89)のベロニカ的ポジション・・・って、もっとわかりにくいか!



 早い話が、結局メイビスは道化に過ぎなかったということが後で明かされるわけです。なんていうのだろう。これは相当の「絶望」ですよ。メイビスの過去から現在までを否定する要因になりかねない。

 けれども、メイビスには都会がある。マットの妹から励まされてミネアポリスに戻るわけだけれども、僕はここに「希望」を感じることはできなかった。

 例えば、『マイレージ〜』のジョージ・クルーニーは心境を変えるにいたった出来事を、ほろ苦い展開にも関わらず肯定した結果、利他的な行動をとり、その上であえて元の自分の生き方に戻るわけです。これは確かに何も変わっていないという点では「絶望」といえるのかもしれないけれど、それでもかすかな「希望」を感じることができる。

 ただ、『ヤング≒アダルト』のメイビスは、仕事が上手く行っていないこともわかっているので、確かに書き上げた小説の文章には少しグッときたが、それでも「メイビスは大丈夫」とは思えなかった。



 おそらくもう一回みたらこの視点から演出などを面白く見ることが出来てポイントも上がると思う。けれども、僕は『マイレージ〜』で感じた「希望」が好きだったのだと実感しました。

Bandwagonesque

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