テンペスト3D(★★☆☆☆)
テーマ:2012年新作
2012/3/17鑑賞(3D)
@サザンプレックス
ライムスター宇多丸のザ・シネマハスラーにて、今年のワースト候補と言われていた作品。
また、コンテンツの性格上ソフト化されない可能性があるので、サービスポイントを用いて鑑賞。
実は、そこそこ楽しめました。
ただ、これはぼくが3年前原作本を読んでいたことが大きいと思います。
ミスキャストはあれど、映像化にあたって余計な事はしていない(それは志の低さに起因するものではあるが)こともあって、原作の力だけでそこそこ面白くは鑑賞できました。
ここで、少し原作の魅力について語ってみたいと思います。
ハードカバー版の重厚な装飾とは裏腹に、実はこれ、ライトノベルの方法論に基づいて作られています。
そこがミソで、つまりは、歴史小説のフォーマットにライトノベルの手法を取り入れたことによるいびつさ、はみ出し具合、そこが魅力になっていて、それは好き嫌い分かれるポイントにもなりうる。けれども、そこは間違いなく原作者・池上永一の作家性であるかと思います。
で、実はこの映画版、というよりもNHKドラマシリーズ版では、そのはみ出していたライトノベル的な部分がかなりオミットされている。
Gackt演じる徐丁垓というキャラクターはその部分を凝縮したようなキャラクターで、Gacktさんの演技はこの平凡な演出の中で異彩を放っているのは事実。たぶんだけれども、Gacktさんの演技は声優の若本規夫さんの演技を参考にしているように思われる。
だが、徐丁垓のエクストリームさが、天下のNHKで再現できるわけもないのだが、やはり大部分がオミットされていたのは残念と言わざるを得ない。
ここだけに限らず、原作小説の面白さを構成していたユーモアが大部分オミットされていたように思う。
例えば、高岡早紀さん演じる聞得大君というキャラクターは、一度平民に身を窶して後、「タイムボカン」シリーズのドロンジョさまのような、憎めない悪役に変容していくのだが、この部分がバッサリカットされていて、だから終盤に再登場して、あることを成し遂げた時の感動がゼロになっている。
ここが本当にわかっていない。
感動と笑いと言うのはセットなのに、それが完全に分断されている。これは、この映画に限らず日本映画の多くに言えることのように思う。
あと、終盤の展開はちょっと原作ファンには受け入れがたいものだった。
まず、テロップでの処理がちと乱暴だし、あと、原作小説は読み終わった後なぜだか無性に寂しくなったんだよね。それは、ひとつの大きな歴史が終わってしまったことに対するもので、その部分は確実に強調しなくてはいけなかったはずなのに、それすらオミットされている。ここはちょっと許せなかった。
改案としては・・・。
まず、150分でも内容は駆け足にならざるを得ないのだから、せめて2部作にするべき。
特に、この『テンペスト』は、ハードカバーで上下巻に分かれていて、その上巻と下巻の魅力はまた異なる種類のものになっている(この下巻の魅力にあたる孫寧温/真鶴の二重生活の部分が大きくオミットされていたのは正気を疑う)。だから、2部作にする必然性のあるものだと思う。
あと、どうしても荒唐無稽な原作なので、非現実的な構成、例えばアニメなどが表現としては適しているのだが、いちばん適しているのは特撮だと思う。
この映画は一応正調の時代劇として構成されているので、フィクションラインの共有が十分になされていない。だが、あくまでも特撮としてのルックを共有していれば、だいぶ楽しめると思うんだ。
ちなみに原作には「仮面ライダー電王」にてハナ役を演じた白鳥百合子にちなんで名前をつけられたと思しきキャラクター(といっても闘鶏だが)が出てきます。
まあ、本気でリブートを希望します。
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