監督失格(★★★★☆)
2005年に急逝したAV女優・林由実香(以下・由実香)について、彼女と生前交際していた監督・平野勝之がまとめたドキュメンタリー映画。由実香が自宅で亡くなっているところを母親とともに発見する映像が収められており、この映画を作製する過程そのものが「喪の作業」になっている。
平野監督の喪失感というのは、終盤になるまで前面に出てこない。
前半は『由実香』('97/平野勝之)の再編集。平野監督と由実香の北海道までの自転車旅行を収めたもの。当初AVとして発表されたものの、良質の青春映画の趣。
林由実香の顔や性格は、最初決して好みじゃないなと思っていた。しかしながら、彼女の強気な性格、裏表のなさそうな、人間力の高さ、そういったものがビンビンに伝わってくるんですよね。彼女自身がきっと好き嫌い別れる人物だとは思うけれども、ある種のセンサーを持った人には確実に訴えかける。少なくとも、ぼくには。Charaみたいな話し方もキュートだ。
後半は、平野監督と別れてから、亡くなるまでの由実香の足取りを追う。
彼女の人間力の高さを感じさせるのが、やっぱり別れた相手ともきわめてフラットに接しているところだ。前半の映像にもあった通り、気の強い性格ゆえのケンカもあるだろうけど、それでも関係性を破綻させない。そういった大きなものを内包する力が彼女にはあったのだろうな。
そして、彼女の死を経て以降の、由実香ママとの確執、および関係の修復。そして、平野自身の「喪の作業」。
こちらでは本当の「喪の作業」であるため、その重みを感じずにはいられない。
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けれども、わたしたちは親しい人を亡くした場合以外にも、日常においていくつかの「喪の作業」を経験する。
たとえば、恋人との別れ。たとえば、親しかった友人との絶交。行きつけの店が閉店したとか、好きなバンドが解散したとか、そういったものでも。