TIME/タイム(★★★☆☆)
2012/4/8鑑賞
@サザンプレックス
そろそろ公開終了。
アンドリュー・ニコル久々の監督作はロングランヒットになった。
「時間」が「通貨」の代わりになるというアイディアや、その可視化の過程。予告編で観たときから、これでつまらなくなるはずはないと思った。
ただ、世間的には不評みたいですね。
たぶんだけど、確かにところどころに詰めの甘さは残る。ただ、おそらくこの星新一のショートショートのような設定すなわちワンアイデア一点で押し切ってしまった所に、映画としてのダイナミズムが損なわれていると感じる人がいたのかなと思う。
けれどもさー、ぶっちゃけ『ガタカ』('97)もワンアイデアじゃね?
これはもう、アンドリュー・ニコルさんの作家性といっていいと思う。
個人的には『ガタカ』より好きです。この映画も、完全に名作扱いされることはないかと思いますが、徐々に評価が高くなっていってほしいかなと思います。
個人的にぼくがこの映画に好感を持ったのは、主人公ウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)が大量の時間を手にし、友人に分け与えるが、それが決して幸福を招かなかった場面。
詳細は省くけれども、ぼくの身の回りにまさにこのような状況に陥った人がいて、どうしてもそれを思い出してしまい、ウィルに肩入れせざるを得なくなった。
格差社会を可視化している=いろいろなモチーフ、出来事が実際の社会のどのような場面を写し取っているのか、というのを推理するという点だけでも、頭を働かせる楽しみがあってきらいじゃなかった。
世の中には、幸福(経済学でいうところの「効用」)の絶対量が決まっていてそれを奪い取ることは必要悪だと信じ込んでいる人たちがいる。本当にそうなのかはわからないけれども、そういった考えを持つ人が多数を占める場合、どうしても社会はその方向に進んでいかざるをえない。そして、そういった社会で利他的に生きようとすることは食い物にされることを意味する。
この映画は、わりとそういった問いに真面目に答えようとしていたと思う。
この問いは、たとえば「富の再分配は本当に社会を幸福にするのか?」といった問いも引き起こすし、はっきり言ってしまえば、この映画内で明確な答えは出せていない。
ただ、その分自分はこの問いかけを持ちかえることができたのは幸福に思う。
ぼくは、あくまで「TIME」肯定派で。