ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン(★★★★☆)
2012/3/29鑑賞
@桜坂劇場(沖縄国際映画祭)
町山智浩さんもオススメしていて期待大だった本作。映画祭で鑑賞したのですが、公開まで感想のアップを待っていました。
おそらく、多くの人が指摘するところだとは思うけれど、ジェイソン・ライトマン監督『ヤング≒アダルト』('11)との共通点が多い作品。
そのうちのひとつが、主人公がアラフォー女性で、仕事にも暗雲が立ち込めていて、セフレはいるものの本当の愛には恵まれていない状況。おそらく、メイビス*1とアニー*2が会ったら、互いのプライドが邪魔して反目しつつも結果的には仲良くなれるかなれないかの瀬戸際に立ちそうな気がするのですが気のせいでしょうか。
さて、宇多丸氏の評を借りれば『ハング・オーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』('10)はエクストリーム版『サイドウェイ』('04)であるけれども、女版ハングオーバーと言われる本作は、その公式を借りれば、ズバリエクストリーム版『ヤング≒アダルト』なのです。
この映画、確かに爆笑に包んではいる(婚前パーティーのスピーチやウェディングショップの洗面所のシーンなど)けれども、確かに感じるのは「イタい」。主人公は残念ながら出産最適年齢も過ぎて、物語開始時点ではいい相手も見つからない、その上、夢であるケーキショップも潰れており、その崖っぷち度合いは今年見た映画の中でもチャンピオン級。それに加えて親友であるリリアンの結婚と、自信と同じく付添い人として現れた、まるで女性の願望を体現したようなヘレン(ローザ・バーン)の登場。
つまり、この状況は、幸福になれていない自分の状況に対比して、すべての幸福を体現しているような存在が現れ、さらには自分に残った数少ない幸福(ここでは親友のリリアンに象徴される)も奪い取られてしまうのではないかという不安から、どんどん不幸を招いていく、というもの、なわけです。
それはある程度までコメディとして見られるかもしれないが、あまりにも不幸にはまっていく主人公にぼくは、どうしても共感を感じずにはいられなかった。
そしてそのどん底はある気まずい場面でピークを迎える。ここも非常に『ヤング≒アダルト』に似ている。
しかしながら、彼女を不幸にしていたのは決してヘレンではない。確かに、映画的にヘレンにはアニーを陥れようとする策略的な顔を持たせている。
だが、そうじゃない。本当に彼女を不幸にしていたのは、ほかならぬ彼女自身なのだ。
彼女はそれを、ある人物の助言によって気づくことができる。
ここがすごくいいんだ。
確かに、お金とか美貌とか、特殊技能とか、そういったわかりやすく人を幸福にできる長所があれば、他人の役に立つ人になれるのかもしれない。必要としてくれるのかもしれない。
しかしながら、真の人間関係とは、そういったものを取っ払ったところにある!
逆にいえば、だからこそコミュニケーションは難しいのだが・・・。お金などのわかりやすい対価を支払っても手に入れることはできないのだから。
はっきり言ってしまえばこの映画のテーマはラストに流れるある曲の歌詞で語られてしまっている。
あと、終盤に向けての伏線回収が若干弱いかなと思った(ただ、あの結婚式のダサさは笑った)。
けれども、『ハングオーバー!』のような何も考えずに笑っていられるようなコメディとはまた違った、実はすごく大切なテーマを含んだ作品だと思う。
*1:『ヤング≒アダルト』の主人公。シャーリーズ・セロン演