大鹿村騒動記('11/阪本順次)
確かに若者向けではないかも・・・
2012/5/6鑑賞
俳優の原田芳雄さんの遺作。
劇場公開時にも観たが、テレビでやっていたので再度鑑賞。
まず、大抵の俳優や監督は遺作を選ぶことはできない。
そのため、完成度が低かったり、また過渡期的な作品が遺作になり残念がられることが多い。
それは病気などの進行状況を考えると仕方がないことなのかもしれないけれど。
そう考えるとクリント・イーストウッドは遺作を作ることを考えて『グラン・トリノ』('09)を作ったのかもしれない。
改めて鑑賞すると結構脚本的に粗があったり、演出も雑なところは残っていたりするんだ。
一番大きな粗だと思ったのは、終盤20分の歌舞伎シーンにおいて現代映画的なBGMを多用していたところ。これは多分歌舞伎リテラシーのない現代の観客に向けた演出なのかもしれないが、ここはやはり歌舞伎の効果音のみに頼るべきだったと思う。
ただ、そういった欠点を上回る魅力というか、エネルギーにあふれているのが本作だと思うわけで。
この映画の何が良いって、一人たりともミスキャストがいないところだ。
三國連太郎さんのような大御所から、瑛太にような若手に至るまで、極めてバランス良く配置されている。こういった、適切な俳優が適切な役割を果たしている映画を観ると気持ち良くなってくる。
また、荒井晴彦の姿勢には思うところあるのだけれども、なんだかんだ言って、日本映画の伝統的な部分を受け継いでいる部分がここにあると思う。こういった映画は確かに古臭く映るんだろうし、映画としてのルックを確保している分この年のキネマ旬報日本映画ランキング1位だった『一枚のハガキ』('11)のようなある種の過剰さはない。けれども、ぼくはこの映画を公開時に観たことでそれまで連綿と受け継がれてきた伝統をかろうじて受け継ぐことができたような気分になる。
そういった構造は一種の閉鎖的なものと映るかもしれない。最後の村歌舞伎のシーンだって狭い共同体のなれあいだって言われてしまえばそれまでだ。ただ、それまで受け継がれてきた伝統の持つエネルギーが、本来なら駄目だとされるものにマジックをかけているように思った。
事実、この映画に出てくる人物のうち、主要人物はかなり身勝手な存在なわけです。だがそれを、原田芳雄、大楠道代、岸部一徳が演じることで、愛嬌というものが生まれていると思います。特に大楠道代さんについては、ぼくは一切熟女萌えの趣味はないはずなのだけれども、まるで女学生のようなキュートさを醸し出していたと思います。
あとは、少しネタバレ、ってほどでもないかもしれないけれど、この映画で原田芳雄さんが最後のシーンまで、ちゃんと生きて終わるというのがぼくには嬉しかった。しかもかなりコメディチックなシーンで。
そんなわけで、これはもしかすると香典含めの評価なのかもしれないけれど、個人的には思い入れがあって好きな映画です。
- 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
- 発売日: 2012/01/21
- メディア: DVD
- 購入: 2人 クリック: 21回
- この商品を含むブログ (1件) を見る