OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

映画ホタルノヒカリ(★☆☆☆☆)

2012/6/25鑑賞

@シネマQ



 シネマハスラーの課題映画で当たったため当り屋根性で鑑賞。ドラマ未見。



 観ていてふと思ったのだけれども、そもそも綾瀬はるかは物語の中心に据えてはいけないキャラクターじゃないのかなあ。



 女優・綾瀬はるかは応援したいと思っている。綾瀬はるかの一大ブームが来たのが2008年ごろだった。クァク・ジェヨン監督作『僕の彼女はサイボーグ』('08)によって綾瀬はるかは主にボンクラ男子を中心にミューズとなった。

 その人気の要因は、と言えば、やはり綾瀬はるかが全身で放出する「このコ、絶対いいコに違いない」オーラだ。例えば香里奈は美人だけれども、ボンクラ男子としてはとてもじゃないけれど相手にされないだろうという感じで気押されるところがある。そういったところを感じさせないくらいのところに綾瀬の魅力はあったんじゃないかと思う。すなわち綾瀬はるかには隙がある。ホタルのようなトロい役も似合う。だからこんな俺でも優しくしてくれそう、なんて考えてしまう。

 それが近年の綾瀬はるかを起用する軸となる指針だった。パブリックイメージだった。『僕の彼女はサイボーグ』では、そういった女優本人のキャラクターをくみ取ったうえで観客が無茶ブリされる綾瀬はるかを楽しむという極めてゆがんだ、一方でアイドル映画としては健全な構造ができあがった。『ザ・マジックアワー』('08)や『おっぱいバレー』('09)の配役はパブリックイメージに沿った感じといって差し支えない。

 

 ただし、ここが彼女のパブリックイメージの限界だった。パブリック・イメージ・リミテッドと言うべきか。

 彼女は、役柄の中に葛藤や矛盾を内包することができない。一種の近代的自我や内面から自由な彼女は、ある意味、二次元に存在する理想的な女性に近い。

 その一方で、『モテキ』('11)で長澤まさみが演じたような役柄は決してできないのだ。



 代償を支払うためか、『インシテミル−7日間のデス・ゲーム−』('10)および『プリンセス・トヨトミ』('11)という2本の駄作が彼女に襲いかかった。

インシテミル』は原作ファンだからこそこの最悪の改変を許すことはできなかった。わけても、綾瀬演じる須和野というキャラクターは、原作通りならこれ以上ないくらいのぴったりとしたキャスティングだったであろうに・・・。おそらく、パブリックイメージを逆手にとったのだろうが、完全に逆効果だった。

プリンセス・トヨトミ』は映画として破綻している。世間では、「ただ綾瀬はるかの乳揺れだけは評価する」みたいな見方ができているけれども、個人的には綾瀬演じるミラクル鳥居というキャラ、下手に性別を変更したせいで何がしたいのかよくわからないキャラになっていて、彼女の魅力を完全に失っていた。



 長い枕になったけれども本作。



 つまりさ、綾瀬はるかのパブリックイメージって、そこに内面がなく葛藤や矛盾が存在し難い以上ここを中心にして物語を進めるのにはあまり適さないと思うんだ。

 この『映画ホタルノヒカリ』においては、彼女に同調するかたちで話が進んでいくため、むしろ中心に居る彼女の言動がノイズになってしまう。

 例えば、僕が一番綾瀬はるかの演じた役で好きなのは『ザ・マジックアワー』の鹿間という女性なのだけれども、これは主人公の引き起こすドタバタに加担する役で、パブリックイメージに準じたものであると同時に、一定の型を成す三谷脚本を真面目に演じているところも含めて好感が持てた。つまり、彼女のパブリックイメージを引き立たせる何かがここでは三谷脚本に当たるわけだ。



 この映画内では彼女のパブリックイメージそのものがデンと置かれる。

 けれども、それが魅力にまでは昇華されていない。とっかかりとして楽しむのは僕には難しかった。



 ほとんど綾瀬はるか論になってしまったけれども、綾瀬はるかの素材を生かした役というのは、前述のようなパブリックイメージに準じた役か、ホラー映画のスクリームクイーンだと思う。



 ともかく、僕としては再起を願います。

交差点days

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