SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者(★★★★★)
2012/6/30鑑賞
@桜坂劇場
すでに鑑賞から1カ月以上経過しているのだけれども、記憶を頼りに。
入江悠監督。サイタマノラッパーシリーズ最新作。1作目で東京に行ったMIGHTY(奥野瑛太)のその後を描く。
個人的には、サイタマノラッパーシリーズでいちばんよかったと思います。
ぼくはこのシリーズ、田舎の空気感の表現などは好みなのですが、音楽に対する信頼に対し、もうひとひねり加える必要があると思っていた。
過去作だと、確かにHIP HOPがいじめに利用される部分などを描いていたけれども、有名なラストシーンは、すでに気持ちが伝わっていることの証明になっていて、そこに、早い話が気恥ずかしさを感じてしまった。
ただ、このシリーズはそういった部分をふまえてこその感動があったのが事実。
まず、MIGHTYのその後についてだが、東京で暴力事件を起こし、栃木で裏稼業に就く様子のリアリズムがとんでもないと思った。
ぼくは未見なのだけれども、『サウダーヂ』('11)は予告編を見るだけでも、なんか怖かった。つまり、私たちの日常と隣り合う、いつでもこちら側を浸食しかねないたぐいの生活感あふれる恐怖と、それを生み出す日常がうまく表現されていたように思う。
そして、誰もが挙げるであろうクライマックスの長回しのシークエンス。
これまでだったらどうしてもHIP HOPにある程度思い入れのある人間にはひょっとすると届かないかもという危惧が生じていたけれども、このシークエンスでもって広く一般的に訴求するものが出来上がっていたと考える。それくらいこの場面は壮絶。日本映画の中でも上位に来るのは間違いないし、ひょっとしたら日本映画が新たなフェーズに入ったのではないかと思えるくらい。
また、サイタマノラッパーシリーズでは必ず押さえるところであるフリースタイルラップのシークエンスも、それまでだったら前述のように無条件にHIP HOPに寄せている信頼みたいなものが気恥ずかしさになっていたけれども、今回はそれまでに用意した状況がかなりハードなこともあって、伝わった瞬間の興奮が素晴らしかった。
MIGHTY、ある意味この一件で箔がつくんじゃ。SEEDAみたいに。