幸せへのキセキ(★★★★☆)
2012/6/30鑑賞
@シネマQ
キャメロン・クロウ監督。マット・デイモン主演の映画。母親を亡くして以来問題を抱える家族が、動物園の経営に携わることで立ち直る姿を描く。
ぼくが最近『おおかみこどもの雨と雪』('11)を観て思い出したのがこの映画。
動物園の経営ができる家族がいるんだからああいった理想的な田舎暮らしも可能じゃないかと思えてしまう。実話だし。これは2011年の今の文脈だからこそできる見方だと思う。
それにしても、最近思うのは、アメリカ映画における父親の役割が変わってきているのではないかということ。
従来はアメリカ映画において「通過儀礼」というかたちで父親は権威であり乗り越えられるものとして描かれてきたが、近年はその父親にも弱さがあることを隠さずに描いているように思う。去年公開された『ツリー・オブ・ライフ』や、ぼくは未見だが『カンパニー・メン』等。失業という問題はサブプライムローン破たん以降リアルなものとして捉えられつつある。そういった時代に、一種アメリカの父権というものは損なわれてきているのかもしれない。今作のマット・デイモンや、『ツリー・オブ・ライフ』のブラッド・ピットなどが、失業等の問題を抱えつつも家族の再生を目指す父親という役を演じるのが非常に興味深い。中には『幸せの教室』のトム・ハンクスといった珍例もありますが(そういやあいつは家族がなかったっけ?)
で、この映画においては、マット・デイモン演じる主人公自身が動物園の復興を進めていくことを通して妻の死から立ち直る過程が描かれ、それとともに息子との確執も描かれる。
ぼくはなんかこの息子との確執、映画の出来とは別の問題でなぜかちょっとだけいやな気分になった。
もちろんそれは後に解消されるためのカタルシスに転じるのだが、やはりこれは自分の個人的な体験がもとになっているのかなと思った。
主人公は多少日和見主義的なところはみせるものの、非常に好人物として描かれるのだが、息子との接し方だけはかなり問題がある。
そこが違和感になったのかもしれないが、作り手としてはきっと意図的なものだと思う。
それはさておき。
この映画が感動的なのは、「人間は人間に影響を与えたり与えられたりしながら生きていく」ということがまっすぐに描かれているからだ。
特に終盤、主人公が発したある言葉が実はある人物から影響を受けたものだと知った時は涙が止まらなかった。その人物が与えた影響によって、彼は人生の駒を先に進めることができた。これほど感動的なことがあるだろうか。
本当にいい気分で映画館を後にすることができた。
ただ、いいことを言っているようで何も伝えることになっていない邦題はちょっと・・・。原題は「We bought the zoo」。動物園という単語は入れるべきだったと思う。『パパと子供たちの動物園』とか。
あと、ポスターとか予告編とかで長男の存在が薄いのも気になったかな。
このあたりは日本での宣伝における問題点だけれども。