OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

RIVER(★☆☆☆☆)

2012/10/28鑑賞

DVD



 まず『RIVER』から。

 正直言って、廣木隆一監督の過去作まで含めて評価を下げかねない出来だと思った。廣木監督作品で結構好きなのあるだけに若干あせったけれども、それらはすべて脚本家が別にいるんで安心した。それにしてもあれだけいい脚本家と仕事しても脚本の技術って身につくものじゃないというのは哀しいな。



 序盤は、まあ悪くなかった。

 長回しフェチとしては蓮佛美沙子秋葉原の街を放浪する場面を10分近い長回しで捉える場面だけでもぐっとくる。あと、ストリートミュージシャンと話をしている場面のドキュメンタリー的な演出も悪くなかった。そう、技術的な水準が低いわけではない。

 わたしたちが普段観ている光景というのはあたりまえだけどカットが切り替わったりしないわけで、そういった意味合いで長回しというのはまるでその場にいるような実在感を出す上では大事な演出方法なわけです。ただ、あくまでも実在感を演出するのが長回しなのであって、長回しをすれば実在感が出るわけじゃない!!

 それゆえ、20分30分と過ぎていくごとに飽きがきてしまう。

 おまけに、登場する人々がなんかあまりにも類型的すぎて、完全に長回しが逆効果になってしまっている。これは、廣木監督がそういった演出方針をとっているがゆえにハードルが高くなってしまうのだ。

 

 で、極めつけが主人公の女性が出会う男性が実は福島県出身で・・・という設定。

 ふだん悪趣味な映画ばっかり観ている人間がこういったことを言うのもどうかと思うんですが、やはりちょっと配慮に欠けるんじゃないかと。それはラストが冒頭と対になるように被災地を歩く男性となるんだけれども、この映画ではそう感じてしまった。

 監督のインタビューを読むと撮影に入る数週間前に東日本大震災が発生していて、それが秋葉原の悲劇と重なるものを感じたとのことだった。

 いやいや、百歩譲って監督が感じたにしても、それを観客に納得できるかたちで示さなくてはダメでしょ。

 秋葉原の事件は出てきませんが、それをやってくれていたのが大林宣彦監督『この空の花〜長岡花火物語〜』です。続いて述べます。そういやこっちにも蓮佛美沙子出てるわ。



 大林宣彦監督は被災地に乗り込まないのは表現者としての矜持であると述べた。

 園子温監督は被災地で映画を撮影したが、そのフィルムには明らかに緊張感が刻まれていた。



 この映画にはどちらもない。



 あと、今までのところ今年見た映画でワーストだった『映画ホタルノヒカリ』と同じく「ムーンリバー」が使われていたのは何かの暗示かと思った。