OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

中学生円山(★★★★☆)


 ♪今日も団地が平和なのは〜




 クドカン監督作としては4年ぶり。

 もともとクドカンは好きで作品は漏らさずチェックしていた。とはいえ、一時に比べ熱は冷えてきたし、ここ数年の作品はどうも同じところを回っている気がした。ただ、一昨年のドラマ『11人もいる!』や現在放映中の朝ドラ『あまちゃん』などがかなりよかったので、この機会にと思い鑑賞。

 結論から言うと、魅力的な部分はあるがまとまってはいない。ただ、個人的に評価が上がらないのはその部分のせいじゃない。

 遠藤賢治さんのライブシーン、および彼のナレーションの具合、主人公がヒロイン(刈谷友衣子)が団地の向こう側の廊下を歩くのを観るシーン、冒頭のカーニバルなど、映画として上がるシーンも確かにあった。

 ただ、この映画のテーマでもある「妄想」がそんなに突き抜けていない気がするのだ。

 せっかく『ブルー・ベルベット』('86)のパロディシーンがあるのだから、スクリーンの中では妄想勝負のハードルは思いっきり上がっている。そうでなくても、妄想具合なら同じクドカン作の『真夜中の弥次さん喜多さん』('05)のほうがうまくいっていたんじゃないかと思うくらいだ。ヤン・イクチュンの演技は素晴らしかったが・・・。

 そんなわけで、ひとつ提案がある。



 まずはこの曲を聴いてほしい。


 ダウンタウン松本人志の作詞による架空のヒーロー、「エキセントリック少年ボウイ」のテーマである。

 この曲はぼくらの世代(昭和60年前後生まれ)では知らない人がいないくらいだが、肝心の「エキセントリック少年ボウイ」は一度も放送されていない。

 ではなぜここまで親しまれる歌になったのか。松本人志の影響力もあるだろうが、架空のヒーローと言えばそれこそ中二的妄想の先発メンバー。それがストライクした世代であり、さらにヒーローものの主題歌を模していながら「同棲相手はオヤジの2号」とか「敵か味方かカーボーイ」とか、断片的な違和感のあるフレーズを潜り込ませることで、放送されなかったヒーロー番組を想像させる広がりを与えている。

 てか、そんな難しく考えなくても、中二的妄想ってそれくらいわけわからないものでしょ!クドカンの描く妄想はその辺突き抜けてないよ!



 でだ。確かに草なぎ剛の演技も悪くなかった。はっきり言ってしまえばあのキャラクターは狂人であり、よくよく考えたら『木更津キャッツアイ』('02)のオジーも狂人なんだよなと思ったが、逆算的に彼の行動が意味を持つことで生じるちょっとした怖さが、草なぎ剛の演技に合っていたと思われる。

 だが、本当に妄想について完成度を高めるなら、彼が演じた下山というキャラクターには松本人志を当てるべきではなかったか。そして、妄想の精度を高めるにあたって全面協力してもらうべきだった。

 映画ではパッとしない松本人志の再起をかける意味でも、彼の演じる下山が観てみたかった。