OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

チキン・オブ・ザ・デッド/悪魔の毒々バリューセット (★★★★★)

 14歳で人類は死ぬ!



解説

「悪魔の毒々モンスター」シリーズで知られるトロマ・エンターテインメントとロイド・カウフマン監督が、過激な下ネタ満載で描くゾンビ・ミュージカル。米ニュージャージー郊外で、ネイティブ・アメリカンの墓地跡にフライドチキンのチェーン店がオープンする。しかし、食材のチキンに先住民の呪いがかけられ、食事をした人々がゾンビや巨大なチキン・モンスターとなって暴れ始める。地獄と化した店内に居合わせた童貞の接客係とレズビアンのガールフレンド、自爆テロが趣味の過激派従業員らは、歌って踊りながら壮絶なサバイバルを繰り広げる。

 トロマ・エンターテインメントとはいわゆる低俗で下品なホラー映画で有名なところで、そういった意味で、万人におススメできるシロモノではありません。

 トロマ映画を特徴づけるものとして、まずは死体やゾンビなどの特殊造形が挙げられる。ゾチアル・ゴメスとクリス・ボウエンという方が担当しているらしいけれど、まず明らかに作りものとわかるようになっていて、そして独特のぬめりがある。確かにグロテスクで悪趣味ではあるのだけれど、頭の中で「これは作りものだ」と線を引くことが可能になっているあたり、観客のことも考えられているなと感じた。
 あと、トロマの人たちは地味に画作りに凝っている気がする。現在、完全にデジタルが主流になっている中で、トロマは実に独特のアナログな画質をしていて*1、それが世界観の構築の一端を担っている。撮影監督はブレンダン・C・フリントという方。

 さて、この映画。とにかく他の映画では見ることが出来ないものが続出する!

 便や吐瀉物が噴出する、人体が壊れるといった点でエクストリームなのは間違いない。ただ、あなたが事前に想像したものをはるかに超えてくるはず。ミュージカルシーンまで出てくるし。
 そう、ロイド・カウフマン監督は想像力の限界にチャレンジしているのだ。
 人が動く時に効果音が鳴るような漫画的な演出・演技もそれを助長している。

 あと、社会風刺的な要素が大きいのも面白かったな。

 サシャ・バロン・コーエンにも通じる笑いのセンスだが、ありとあらゆるものを差別的に描くことで逆に平等を感じさせる。黒人もユダヤ差別主義者もイスラムさえも出てくるし、大企業に対するデモやレズビアンの描き方にだって悪意を感じさせる。また、低賃金労働者を徹底してコミカルに描いたり、そもそも題材が『スーパーサイズ・ミー!』('02)的なファストフードに対する反感から来ているものだし。情報の詰め込み方が半端ないんだよね。きっとひとつひとつ吟味していけばアメリカの問題が見えてくる。
 すなわち、このホラー映画の舞台になるファストフード店こそ、アメリカの縮図なわけだ!

 そんなわけで、こちらの映画。ただのおバカホラーにとどまらない魅力があったと思います。

*1:これは撮影が2007年というのもあるだろうけど