OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

ムーンライズ・キングダム(★★★★☆)

ムーンライズ伝説

ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「ダージリン急行」のウェス・アンダーソン監督が、1960年代の米東海岸ニューイングランド島を舞台に、12歳の少年と少女が駆け落ちしたことから始まる騒動を、独特のユーモアとカラフルな色彩で描いたドラマ。周囲の環境になじめない12歳の少年サムと少女スージーは、ある日、駆け落ちすることを決意。島をひとりで守っているシャープ警部や、ボーイスカウトのウォード隊長、スージーの両親ら、周囲の大人たちは2人を追いかけ、小さな島に起こった波紋は瞬く間に島中に広がっていく。ウェス・アンダーソン作品常連のビル・マーレイジェイソン・シュワルツマンをはじめ、ブルース・ウィリスエドワード・ノートンフランシス・マクドーマンドティルダ・スウィントンら豪華キャストが出演。(ムーンライズ・キングダム : 作品情報 - 映画.comより)


 これはいいっすね。ウェス・アンダーソン監督は今まで『ファンタスティック Mr.FOX』しか観たことなくて、それもあまり好みではなかったので心配だったけれど、これはとても楽しめた。

 とにかく、画面いっぱいに広がる遊び心が堪能できる。多用されるズームインやズームアウトは物語に必要な情報を饒舌に伝えてくれて、それだけでもウェス・アンダーソン監督一流のもてなしを受けている気分になるのだが、さらに全体的に多用される左右対称的な画作りといい、もてなされ死しそうだった。おそらくは様々な小道具の使い方とか、何度も観ていくうちにわかってくるところも多いだろう。

 個人的には、何不自由ない環境で育って、かつ体も弱かったから図鑑や物語に没頭することの多かった少年時代を送った身としては、こういった作りものだということを念を押してくるような演出がむしろ現実的で、失われた少年時代の心象風景を写し取っていると思った。

 あと、やはりこの物語は『小さな恋のメロディ』('71)が下敷きになっていると思われる。ただ、それを現代的に語り直すとなると、いくら舞台が60年代だからといって、あの頃のように大人たちを何もわかってない体制側として描くことはできない。そのあたり、苦慮のあとがうかがえた。
 やはりウォード隊長(エドワード・ノートン)にしろ、シャープ警部(ブルース・ウィリス)にしろ、サムたちの逃避行に、自らが失ってきたまっすぐさを見てとっているわけです。この映画の数少ない欠点として、その流れに持っていくために中盤以降少々物語として錯綜しており、違和感のある個所が発生していることが挙げられる。カットの切り替わりが早く余韻が少ないので、このあたり目立っちゃうんだよなあ。それでも終盤の展開には涙せずにはいられなかった。
 ただ、同時にこれは『小さな恋のメロディ』ラストからちょっとだけ足を進めているだけに、少しビターな感触も残るのだが、これはおそらく今のぼくがくみ取り過ぎているのだろう。


 ひとつひとつの小道具や建築、天候、はたまた音楽や本に至るまで、情報が詰め込まれているので、きっと見返すたびに新たな発見がある作品なのは間違いない。
 ともかく、ぼくはこれから何度もムーンライズ・キングダムを訪れるでしょう。

ムーンライズ・キングダム [DVD]

ムーンライズ・キングダム [DVD]