OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

2013年観た映画ランキング(50位−31位)

 このあたりに来ると、ベスト10入りを一瞬は考えたような作品も出てきます。こんな順位つけてごめんなという枠です。



50位 愛、アムール
 フューチャーの先に待つもの。ぼくはこの映画にも51位に挙げた『ザ・フューチャー』に通じる退屈を感じた。似た演出意図があるのかも。『ザ・フューチャー』、『ブルーバレンタイン』と続けて見ると、交際や結婚をしたくなくなるかもしれない。それでも、何もないよりはマシだ。決してストーリーとしてはその方向性に進んでいないのに、そう思わせられた。


49位 あの頃、君を追いかけた
 映画としての出来は今一つでも、どうしようもなく心に残ってしまう一本というのがありまして、この映画に関しては明らかに流行映画の体をとっているのだけれども、その瑕疵が逆にいとおしいものにも思えてくるという意味で、貴重な作品。
 あと、女性のほうが先に大人になって、男は自分の中に子供を飼ったままというのは真実の一端を突いていると思います。あいつらにまた会いてえ!


48位 藁の楯 
 もろもろの突っ込みどころは満載なのだけれども、日本のエンターテイメントがスケールを広げる、そのベクトルは決して間違っていないと思う。また、テーマとして『ダークナイト』の精神性をちゃんと消化しているようにも思えるし、その流れを受けた悪役の描き方も『十三人の刺客』の稲垣吾朗の発展形であるし、なによりも画作りにおいて、三池監督の腕の高さを見せてくれる。完璧な作品とは言えないが、すべての国産エンターテイメントの作り手が踏み石にすべき作品。


47位 みなさん、さようなら
 観終わった後無性に切なくなる。団地という限定した舞台が時代の流れやひとりの男の成長を象徴するものになっているという意味でも出来のいい作品だし、倉科カナはエロいし、あと、主人公の濱田岳がかなり大人になるまで母親の庇護のもとで育つというところに、父親よりも母親のほうが乗り越えるのは難しいかもしれないというものを感じて、このメッセージ性は今の日本に有効だと思った。中村義洋監督作ではもっとも出来がいいのでは。


46位 四十九日のレシピ
 タナダユキ監督の映画を観るのは3本目なのだけれども、これが一番よかった。何度か落涙。これは映画で少女論を描いている。少女趣味という、男性にとっては馴染みがない一方で、確実に生活に根付いているもの。いかに社会に根付き、変容し、そしてこれからどうなるのか。とても興味深い題材だった。


45位 リアル〜完全なる首長竜の日〜(2回)
 一回目はデジタル化によって黒沢清の怖さが失われた感があり、あまり好きではなかったけれども、2回目で演出の手堅さを再認識した。例えば、センシングの後なぜ佐藤健はあの行為をしているのか、とか。ただ、それでもこれは黒沢清の過渡期の作品になると思う。


44位 セデック・バレ 第一部 太陽旗

43位 セデック・バレ 第二部 虹の橋 
 ライムスター宇多丸のムービーウォッチメンでは1位を獲った作品。確かに、かつて日本映画が持っていたスペクタクルが台湾において発揮されている。この映画の何がいいって、果たして文明化することがよいことなのか?かといってセデック族の風習だって女性や子供に多大な負担を強いる(それが顔についた刺青というかたちで常に意識される)。それでも、失われた民族だとしても誇りは確かにあったのだ。という弁証法的なメッセージを感じ取ったからに他ならない。あと、戦闘シーンはものすごい迫力でした。


42位 ラスト・スタンド
 2013年は往年のアクションスターが自らのキャリアを再確認するような映画が多くて、イーストウッドの『グラン・トリノ』の影響かとは思ったのだけれども、世代的に一番思い入れのあるスターはアーノルド・シュワルツェネッガーで、そんなわけで一連の作品群の中でこれを推すことにしました。まさに小さい頃に親しんだアクション映画がスクリーンに戻ってきたという感触で、うれしかったなー。


41位 ゲキ×シネ 髑髏城の七人
 ストーリーにぐいぐい没入できたという点では他の追随を許さないかも。中島かずき脚本作品では一番好きかもしれない。3時間という長丁場を飽きさせない展開、役者陣の熱演、仲里依沙の太もも等、魅力にあふれた作品。もし「映画」として成功していたらさらに上位に行ってただろうね。


40位 探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点
 こちらも日本のエンターテイメントとして、まさに王道を行っている作品。こういう作品を観るだけでうれしくなるんだよな。まとまった分、前作にあったいびつさゆえの魅力は薄れた感じがあるが、個人的にはどちらも好き。願わくばもう少し短いスパンでシリーズが続いてほしい。


39位 凶悪
 この映画内ではリリー・フランキーピエール瀧といった、お茶の間感のある方々に悪役を演じさせることでその恐怖を観客の身近なものとして感じさせることに成功している。メインキャスト以外はほぼ無名な役者さんなのもいい。主人公の山田孝之が、社会的な指名のため家庭を顧みないという部分は男性として身をつまされるところであり、そのことを示唆する役柄という意味ではリリー・フランキーの演じた役は『そして父になる』とも似ているのかも。デートで見るんじゃなかったとは思った。


38位 偽りなき者
 こちらも重い作品。『凶悪』とテーマは一部重なるのかもしれない。人は正義の名において行動するとき残酷になる。それは現代における魔女狩りにもなりえる。そのことをありありとスクリーンに刻みつける。極めて同時代性を持ったテーマであり、デンマークの冷え冷えとした風景は美しくも哀しかった。


37位 ベルリンファイル
 かっこいい!『裏切りのサーカス』をアクション大作としてリメイクしたような印象! よくよく考えればこの企画は日本でも全然撮れないわけはないわけで(国連ロケができるくらいだし)、そういった意味では悔しい作品ではある。ハ・ジョンウは『哀しき獣』に続いて民族的に複雑な役柄なのだけれども、こちらのほうが屋台骨がしっかりした印象を受けたので好みです。


36位 チキン・オブ・ザ・デッド/悪魔の毒々バリューセット 
 ジェームズ・ガン監督の映画を観た時も思ったけれど、トロマの映画は不思議な映画的魅力に溢れている部分がある。それは、「これは作りものです!」という様々な着ぐるみとかを、観客がわかった上でストーリーに加担するという共犯関係がまさに映画の原初的な経験であることによるのかもしれない。ファストフード店にアメリカの諸問題をすべて詰め込み、ミュージカルにしてしまうという離れ業。しかしながら、あまりにも下品で食欲が無くなるので、おすすめはしません! ぼくはしばらくハンバーガーが食べられなくなった。


35位 建築学概論
 昔好きだった女に対して溜飲を下げる瞬間が描かれているため、これは男性のためのファンタジーなのかもしれないし、その点が嫌いな人はいるだろうな。ただ、ふと思ったんだよな。かつて自分が被害者のつもりでいた関係性、実は自分が加害者だったのかもしれないと。そういう意味合いで、過去を見つめ、整理し、次に進むステップが描かれている、過去との向き合い方について真摯に向き合った作品だと思います。


34位 ペーパーボーイ〜真夏の引力〜
 1960年代、それも南部という、黒人差別が根強く残る時代・地域で基本的には青春(童貞)映画をベースにしながら、彼が直面する現実はあまりにもシビアという意地悪な構成の映画。『ブルーベルベット』にも通じるが、要は青春期の疎外感(重要なことから自分が蚊帳の外に出されている感覚)が通奏低音としてあるわけです。決して爽快になれる映画ではないが、その重苦しさも含め、非常に興味深く重要な作品だと感じた。


33位 エンド・オブ・ザ・ワールド
 若干たるい部分はあるが、思いかえしてみるといいシーンばかり。ディザスタームービーだというのに緊張感はほとんどなく、ポップミュージックとコメディに彩られて終末を迎える。案外実際に世界の終わりが来た時というのはこんなものなのかもしれない。ニュースキャスターの最後の言葉には号泣した。あと、この映画のキーラ・ナイトレイは最高すぎる!


32位 パシフィック・リム(3回)
 今年の鬼門その3。明らかに今年考えていた時間が一番長かった映画だ。40回以上劇場で見たという人もいるくらいカルトな人気を誇る映画だが、その祭りに十分乗り切れず、なぜ乗り切れないかとの自問自答はもはや哲学の域に達していた。ただ、最近ブルーレイで観直してみたら十分傑作だった。上海戦は映画史に残る大迫力。今なら心からおすすめ出来る気がする。


31位 AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜
 かなり最近までベスト10に入っていた。傑作だなんて口が裂けても言えない。むしろ岸監督のポップ趣味は後退しているし、原作に比べてデチューンされているところが大きい。ただ、今アニメ化される意味があったかと問われたらぼくは「ある」と即答する。原作のライトノベルが出版されたのが5年前。オタクはまだ疎外される者であったし、その疎外感を救済する展開に涙した。そして5年が経ち、オタクはもはやマジョリティになった。もちろん、新規流入者との内紛等の問題は絶えないだろう。しかしながら、この5年の流れは物語のラストに説得力を与えた。「ここではないどこか」ではなく「今ここ」を肯定するために必要な物語に、5年の時を経てぼくは涙した。


 今日はここまで。明日は30位から11位までを発表します。