OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

2013年観た映画ランキング(30位−11位)

 ここらへんなんですけど、もうベスト10級というよりも、僕としては30位から21位までとか20位から11位までとかは、ほとんど裏ベストと裏の裏ベストを考えるようなかたちで作りました。
 


30位 パラノーマン〜ブライスホローの謎
 とてもよくできたアニメ。技術的に素晴らしいのはもちろん、終盤の展開、そして、ノーマンが狂わずにいられたきっかけを最後にさりげなく示す粋さがたまらなかった。要は、「幽霊が見える」ということは感受性が高いことの比喩であり、それは生きづらさにつながるのだけれども、それゆえに世界の仕組みを感じ取ることができるのだというメッセージには胸を打たれた。泣きました。


29位 言の葉の庭
 恥ずかしい。けど好きだ。まず、新海美術とも言うべき美しい背景が存分に堪能できて、これだけでもアニメとして価値のあるものになっている。あと、花澤香奈の(『AURA』同様)現実と夢想の間で揺れ動くといった役柄が、彼女の声質にあっている気がして、そこがこのアニメに素晴らしいリアリティを与えていた。思いだすとちょっと寂しくなる作品だ。


28位 ジャンゴ 繋がれざる者
 差別等で虐げられた者が虐げてきた者に復讐する話というのは大好物で(去年の4位は『ヘルプ〜心をつなぐストーリー〜』)、しかもそれにタランティーノ流のエンターテイメントが加わったのだから、面白くないはずが無い。多くの人が絶賛するのも納得。改めて考えて見ると、シネコンでジャンゴのテーマを聞くことや、シド・ヘイグが見られること自体奇跡的なことではなかろうか。ありがとうタランティーノ


27位 セレステジェシー
 確かに、登場人物にはあまり好感を持てない(特にジェシー)。ただ、セレステのneatな性格を克服する過程が丁寧に描かれていて、かつ90分のランタイムに収まっているのだから、実はかなりすごいことをやっているのではないだろうか。オープニングタイトルとエンディングの物語を切り上げるタイミングが抜群。


26位 舟を編む 
 この映画の演出はちょっと前時代的で、それが物語のテーマと一致していたのに好感を持った。調べ物をするとき辞書を取り出すところで現代に生きる我々はどうしてもスマホiPadを連想する。松田龍平の演技も素晴らしい。ベストセラー小説の映画化として最善の例。


25位 はじまりのみち
 傑作だと思うが、評価がかなり上がっているので期待外れだと言われないようにあらかじめ言っておくと、完璧な作品ではない。というよりも、いわゆるリアリズムを標榜する作品ではない。しかしながら、最後にはぐずぐず泣かされてしまう。つまり、それまで小出しにされてきたものが最後の最後で爆発する(しかも映像としてそれが示される)という、デ・パルマや大林に通じるような手法を用いている。反則だ・・・と思いつつ胸に深く突き刺さった。


24位 ハッシュパピー〜バスタブ島の少女〜
 とにかく映像に圧倒された。完全に未知なるものが出てきた感じがして、末恐ろしい。要は、ハッシュパピーの眼に映る未分化な世界をそのままフィルムに刻みつけているわけですね。それは時に残酷であるし、時に美しい。そして、世界とは意味に溢れていることを改めて実感する。ジブリアニメからの影響も感じられるが、他のどの映画にも似ていない傑作。


23位 アフターショック
 90分程度のジャンル映画の中にこれでもかってくらいの様々な要素を詰め込んだ傑作。確かにこんな世界早く滅んでくれないかなーとは思った。けれどもここまでひどいとは。ある人物の成長にぐっとくる展開もあるし、311を経験した後だといろいろなことを考えずにはいられない。ただ、ブラックユーモアは明らかに人を選ぶので、万人にはおすすめできない。


22位 イノセント・ガーデン
 パク・チャヌクが初めてアメリカで撮った映画。こういう耽美な世界観の映画は自分の中の思春期が再度刺激されるので、どうしても惹かれてしまう。美しい映像というのは、観客がそこから意味を感じ取れるものであり、そのさじ加減が見事だった。脚を這う蜘蛛の美しさ、手足をばたばたさせる奇妙な動き。あと、この映画のラストはハッピーエンドともバッドエンドともとれるけど、あの瞬間にどうしようもない多幸感があった。


21位 そして父になる(2回)
 未だに思い出すたび涙ぐむ。福山雅治の演じたキャラクターは社会人男性にとって、ある種の理想像である。しかしながら、ある事件をきっかけにして、その理想像の脆さがあらわになる。去年話題になった『桐島、部活やめるってよ』に実はすごく似た構造を持っている。父になるまで考えておくべき宿題をもらったなあとは思う。自然を作るのは時間がかかるかもしれないが、不可能ではないというかすかな希望が残るところもgood。


20位 地獄でなぜ悪い(2回)
 僕は支持します。この作品のノイズになっているのって、登場人物が現代の日本映画を批難していることから、そのビッグマウスゆえにハードルが高くなっているのはあると思う。演出のリアリティ面や脚本に関して欠点がないとは言わない。ただ、それでも嫌いになれないどころか、『冷たい熱帯魚』より後では一番好きかもしれない。やっぱり、あいつらにまた会いたくなるんですよ。おそらくだけど、この映画の中で描かれる「死」というのは、園監督がかつての戦友(映画制作を一緒に行ってきた仲間)に対しての鎮魂の意味合いがあるのではないかと。現実に負けて自分のもとを去って行った仲間に対して、お前らの意思は引き継いだ。これからもやっていくぞという表明じゃないかと、そんなことを考えてしまう。



19位 ザ・マスター(2回)
 1回目見た時はさっぱりわからなかった。2回目見ても完全に理解できた気がしない。感情移入できるキャラクターがいないし。ただ、フィリップ・シーモア・ホフマンが意識(理性)を、ホアキン・フェニックス無意識を象徴していると考えると、実はすごく普遍的な物語ではないかとも思えてきた。むろん、そう定義するとこぼれおちる部分が出てくるところも含めて、この映画の難解さであり、かつ歯ごたえなのかもしれない。


18位 フライト(3回)
『ザ・マスター』よりは平易であるものの、こちらも観客に対して開かれた、多様な解釈を許す映画である。エンターテイメントとしてもとっつきやすいが、それでも最初見たとき、なにかひっかかるものを感じた。公聴会におけるデンゼル・ワシントンの告白は感動的だが、同時にこれによって不利益を被る者の存在が頭を過る。で、ロバート・ゼメキス監督の映画にはもう一つこれによく似た展開が出てくる。『コンタクト』のラストにおけるジョディ・フォスターだ。あの展開を見て僕は確か、天の啓示というのは莫大な金より価値があるものだと思ったはずだ。『フライト』に立ち戻れば、これは確かに宗教映画の側面を含んでおり、デンゼル・ワシントンはあの時天啓を受けたのかもしれない。僕が前述のような感想を持ったことで、この映画から見つめ返されていたのだと改めて思った。


17位 オブリビオン
 すごく気持ちのいい映画だった。SF的ガジェットは類型的なようでいて、その進化に至るまでの過程を思い描きやすい。記憶をテーマにしていることもあってか、非常にセンチメンタルな気分になり、その気分は観客が画面から受け取った情報のミッシングリンクに入り込み、エモーションを増幅させる。過去のSF映画の意匠を受け継ぎながら、エンターテイメント性を失っていない新たなクラシック。


16位 スプリング・ブレイカーズ
 僕はこの映画が新しいのか古いのか未だに判別できずにいる。ミュージックビデオのような撮り方はすでにやりつくされているのかも。そもそもダンスミュージックは(メインに限って言えば)ここ10年くらい進化していないのかも。明らかに物語は『真夜中のカーボーイ』じゃないか。でも、全体を通して見ると、新しいような印象を受ける。ライムスター宇多丸さんが言っていた、現代アメリカの若い奴らの間ではパーティーの熱狂の行きつく先は犯罪行為になるという点で、トレンドを写し取っているからか。わからない。でも、この快楽と不快の間を行き来する映像経験は他の映画では得られない。


15位 ムーンライズ・キングダム
 こちらもすごく気持ちいい映画だった。すべての画面のキャプチャーを撮りたくなるくらい、すべての画面が決まっていて、それはすなわち、この快楽が90分強続くことを意味する。そんなの未経験であるはずなのに、不思議と懐かしさも感じる。少年少女を題材に取っているのが大きいのだろうが、それに加えて視点が(『ハッシュパピー』ほどではないにせよ)少年少女のそれに合わせているから、自分の経験したそれを当てはめることができるのだ。ウェス・アンダーソンの作品をこれからも見て行きたいと思いました。


14位 かぐや姫の物語
 ポスター等を見たとき、こんな絵が本当に動くのかと思っただけに、動いているのを見ただけで素晴らしいと感じた。この映画が作られた経緯を調べるにつれ、この映画が我々のもとに届けられたという事実自体に驚愕せざるを得ない。また、日本最古の物語と言われる話を、日本最高の技術を持ったスタジオが制作し、それを映画館で見ている。それだけで日本の物語を巡るひとつの流れが円環構造に入ったような気もする。まあ、さすがにこれは大げさか。ただ、日本最古の物語が民からはじまり官を風刺するような構造を持っていたということを強調する点、高畑監督の追加した要素としての屈託のない自然崇拝。全体を通して意味が追加された映像の数々は素晴らしいの一言。もちろん、完全に咀嚼しきれてはいないけれど。


13位 劇場版魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語
 アニメが2本続いた。どちらも他のアニメでは見られない映像が上映時間中ずっと続くという共通点があると思うんです。で、客観的に言えば『かぐや姫の物語』の方が価値があると思うけれど、極私的にはこちらに惹かれざるを得ない。
 要は、こちらも観客に対し、その罪を問うつくりになっている。前作の最後でおまえはあるキャラクターに対し、都合の悪いものを背負わせてきたんじゃないかと。だから、終盤ダークサイドに堕ちるある人物についても、むしろヒロイックなものを感じ取ってしまったんだよね。そして、こういったことは自分にも思い当たる節がある。色々な不都合を他人に押し付けたり、または押しつけられたりしてきた。だから、ある意味個人的にこの映画は救済の物語でもあったし、新たな問題を焚きつけられたのも事実。いずれにせよ、問題作。


12位 ホーリー・モーターズ
 レオス・カラックス監督の映画が好きだけど、まさかリアルタイムで新作が見られるとは思っていなかった。沈黙していた間に変容した映画への様々な念が表出する作品であるが、不思議と難解な印象は受けない。とにかく、スクリーンに映るものがものすごくて、初見では意味を考える隙すら与えない。こんな映画見たことない。何というか、カラックス監督が映画、それもデジタル媒介を用いて遊んでいる印象が強く、むしろすごくハッピーな映画じゃないかという気がしてくる。そのハッピーさが最も前面に現れているのがインターミッション


11位 ゼロ・グラビティ
 宇宙ヤバイ。正直に言えばキュアロン監督なら前作の『トゥモロー・ワールド』のほうが好みではあるけど、おそらくあれだけの情報を受け止めきれなかったんじゃないかと自分では思う。それでも、終盤の生命力に満ちた流れには涙した。再度鑑賞してみたい。ちなみにこの作品でIMAX童貞を捨てました。
 

 明日はいよいよトップ10。イブの夜に発表します!