OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『アデル、ブルーは熱い色』(アブデラティフ・ケシシュ) ★★★★★

f:id:otsurourevue:20140608182416j:plain
 輸入版Blu-Rayを英語字幕付きで鑑賞。ファーストシーンから「あ、これ俺の好きな演出だ」というのが冴えわたっている映画。とてもよかった。
 とはいえ、この映画は別段新しいことをしているわけではない。ストーリーは私の拙い英語力でも理解できるくらいシンプルだし、映画の作りとしても現在隆盛ではないが十年くらい前にこんな感じの映画たくさんあったな」というところ。「ドグマ95」的アプローチ。ただ、それは一概に欠点とは言えない。
 いろんな人が指摘しているところではあるけれど、レズビアンの恋愛の話でありつつも、普遍的な男女間の恋愛にも十分起こりうることが書かれている。むしろこの映画、多くの人の共感を呼ぶテーマを扱っているという点においてはすごく敷居低い。カンヌ映画祭パルムドールとか、3時間の上映時間とか気にせず広く見られてほしい。
 あと、映像としても、色彩の意味合いで心情を読み取れるつくりになっている。タイトルにもあるとおり「青」が全体のトーンを決定しているのだけれども、これに様々な意味合いが持たせられる。青はエマの髪の色であるが、それがその後いつ消えて、そして再度現れるのはどのタイミングか?
 全体的にクローズアップが多く、そこを息苦しく感じる人もいると思うが、これはアデルの、恋愛中の人間によくある「あなたしか見えない」状態を映像的に現している。身体の一部のアップや動きにより人物の感情の機微がわかる。それを楽しめる人にはご褒美のような映画。
 3時間のランタイムの割にシームレスに続いていくのも魅力。*1
あとはやっぱり主演二人の体当たり演技。アデルを演じたアデル・エグザルホプロスは常に半開きの口がキュート。冒頭、通学バスに間に合わないで走るというシーンが出てくるんだけど、このアデルというコはあまり自制ができない性格なんだということに説得力を持たせる。この「自制の効かなさ」への説得力がそのままアデルの魅力につながっているんですね。体の張りとか、食べ方が微妙に汚いところとか、隅々まで動きに対する演出が行きとどいていると感じた。
対するレア・セドゥも見事で、アデルは学生という守られた身分なので、最初出会う時に別世界の女性という感じがしなくてはいけないのだけれども、あのアーティスティックな人脈界隈にいそうな実在感はとてもよかった。ショートヘアが似合いすぎ。はまっていただけに落ち着いていく時に寂しさを感じるところなど、バランスが見事。
 まとめると、この映画に描かれる恋愛は熱を持つものであり、それはいつまでも続くものではないわけです。それすなわち「青春の終わり」にも似ていて、それゆえ90年代の映画のような作りも、失われた何かという感じがしてとても合っていたと思います。

*1:一応、原題は『Blue is the Warmest Color Chapter 1&2』なのでどこかで分かれていると思うんだけどあまり気にならなかった。