OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『チョコレートドーナツ』(トラヴィス・ファイン) ★★★☆☆

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2014/6/15@桜坂劇場
 タイトルとは打って変わってかなりビターな映画だった。非常に有意義な問いかけであると思う。
 多くの人の胸に訴えかける物語であり、メッセージ性が重要な作品奈緒で本当はあれこれ批評するのは的外れなのかもしれないです。けれども、ひとつだけ。
 本当に惜しいと思ったのが、これはルディ、ポール、マルコの3人が過ごした時間について、もうちょっと多く見せるべきだったんじゃないかということ。そのほうが後々の展開も効いてくるだろうし。 例えば、ルディさんは気性の激しい性格なので思わずマルコを怒鳴りつけてしまうけれども、それを乗り越えて絆を回復するとか、そういった『クレイマー、クレイマー』的な展開があったほうが、この物語に普遍性を持たせることができた。
 ただ、ラストである事実が告げられると同時にルディの歌が被さる、あの演出はとてもよかった。マイノリティの差別を取り除く前に多くの人に事実を知ってもらわなくてはならない。そのためには音楽をはじめとする文化が大事なのだ。
 音楽は世界を変えないけど、突破口を開けることはできる。この映画のなかでは皮肉な使われ方をしていたT-REXだけれども、グラムロックは男性が化粧をして歌うことで「男らしさ」に対し批評性を与えた。クイーンのようにゲイをカミングアウトしたミュージシャンもいる。差別は厳然として存在するが、それを乗り越えるには音楽など文化の力が大事なのだという思いにさせられるエンディングだった。

I Shall Be Released

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