OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『渇き。』(中島哲也) ★★☆☆☆

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2014/7/28@Tジョイ博多

 どうしようか。『下妻物語』以降の中島作品はすべて観ているし、そのどれもに良い評価を下してきたのだがここにきて黄信号。もちろん、今の日本映画に一石を投じる役割を果たしているとは思うし、無価値な作品とは思わないが、ただ残念。
 この映画、常にff(フォルテッシモ)で、時折ffffffff(フォルテッシシシシシシシシモ)くらいまで行く映画。殴る効果音がやけにリアルだったり、音楽の繋ぎ目をスムーズにしてDJ感覚を醸し出しているあたり、音響による生理的反応を促しているように思う。時折音響を不快だと感じたとしても、それは向こうの思う壺なのかも。
どぎつい色彩や過激な物語と言うことで連想される『ヘルタースケルター』よりはマシだし、きっとこれはこれで(監督の意図通りに映像化出来たという意味で)ひとつの完成型だとは思う。
 そんなわけで原因は自分にあると考え、自分の中島作品への鑑賞態度を顧みるのだが、たぶんだけど、中島監督の前作『告白』を僕が楽しめたのって原作を先に読んでいたから、むしろ加害者的に映画を楽しんだからなのかもしれない。シネコンで良識を踏みにじる様は確かに痛快だった。で、今回はそのサディズムをさらに突き詰めたわけだし、それをあえて今回は(普通の映画と同じように原作を事前に読まずに)被害者的に楽しもうと思った。だから本当は「殴られて痛い」というような感想は逆説的に誉めていることになるのかもしれない。
 それでも、どこか違和感がある。
 仮にこの映画を加害者的に楽しもうと思っても、僕はたぶんここまでは傷つけることを楽しめないと思う。もちろん今後も中島監督の作品は追いかけていくが、ちょっとこれからが怖くなった。