OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『TOKYO TRIBE』(園子温) ★★★★★

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2014/8/31@桜坂劇場

 園子温監督の映画はいつもすごくいいところとすごくよくないところが混在していて、それが好き嫌い分かれる部分だ。だがこれだけは言える。「こんな映画見たことない」それがこの映画を支持する理由。
オープニングがすごくかっこいい!長回しでこのTOKYOの街を写し、それに乗せてカメラ目線で染谷将太のラップで状況が語られる。この時点でかっこよさで射精しそうになりましたね。あのシーンに出てきた佐々木心音はどうなったのかとか気になるけど。
 それからずっと途切れるとこなくラップで物語が、心情が語られる。この構造実はヒュー・ジャックマンの方の『レ・ミゼラブル』に近い。ずっと気分の高揚が続いてダンスの足を止めさせてくれない感覚。確かに疲れるけど、この映画経験、僕は「快」として受け取った。
 あとは、役者陣はどうしてもおどけ感が出ていた竹内力以外はよかったと思う。特に鈴木亮平。世の中には見るだけで鍛えたくなる体というのがありまして、『ファイトクラブ』のブラッド・ピットがまさにそれなんだけど、この鈴木亮平の体はまさにその系譜だった。
 この映画が男性中心主義だと糾弾されたら、まあ、それはそうなのかなと思ってしまうとこもあるけど、でもこの鈴木亮平の体や演技は、それを究極的に突き詰めていて、マチズモには程遠い筈の自分でもかっこいいと思ってしまった。黒ジャケットにターミネーターサングラス!
 あとは、アクション演出についてもこれまでの園監督作品に比べ見やすくなっていたと思う。特に、スンミを演じる清野菜名のアクションとか、かなりよかった。この映画があくまでも生理的に訴えかけるところを多くしていると感じたところでもある。
 ただ、本当にラスト10分までは年間ベスト級と思ってたけど、どうもこのラストが、それまで外に外に向かっていた世界観が閉じてしまった印象を受けた。人によってはここを皮肉と受け取っているみたいだけど、なんというか、最後の最後でTOKYOから追い出された感触。
 脚本の粗とかはさておくことは出来ても、この辺りはテーマ的な裏切りに思えてしまうのも事実。ラストでメラの戦う理由が明らかになるが、ここも逆算的にそれまでの展開が、死者も出ていることもあって、台無しになった印象を受けた。
 ただ、ヒップホップのレコードはあまり余韻を残さないトラックをラストに置くことも多いし、その点では忠実なのかも。少しこじつけかもしれないが、おそらくはマイルドヤンキー層が多く映画館に集う作品にマチズモを否定するような展開を入れたのは園監督なりの悪意なのかも。
 それでも、僕としては、何か決定的に新しいものを見せてくれた時点でかなり好きよりに傾いている。