『her 世界でひとつの彼女』(スパイク・ジョーンズ) ★★★★☆
2014/8/30@シネマパレット
OSとの恋愛というトリッキーな設定を使っているけれども、コミュニケーションの不完全さに対して真摯に向き合った作品だと思います。
例えば、こういう設定を用いて、「科学の進歩がはたして人間を幸せにするのか」という方向の問いかけに行かなかったのは新しいと思った。むしろ、恋愛/コミュニケーションに絞ったことで映画に普遍性を与えている。
近いのはやはり『(500)日のサマー』だと思う。恋愛映画をアップデートしようという試み。お洒落で生活感はないけれど、それは温もりがないという意味ではなく、むしろその人の都会的な孤独を映し出す。観る状況によってはすごく重なりそう。
ただし、映画の出来とは別に言えば、僕個人としてこのセオドアさん(ホアキン・フェニックス)はあまり好きになれない。ただ、彼の元妻が言ったこと、相手にイメージを押し付けたり、リアルなコミュニケーションから逃避したりという点はかなり身につまされたので同族嫌悪かもしれない。
そういった生活感の乏しい光景を経て、ラストに辿り着く風景の美しさ。僕はエイミー・アダムズが出演していると「ああ、アメリカ映画だなあ」という気分になるのだけれども、まさにアメリカ映画のラストショットという感じで気持ちよかった。