『ウィッカーマン』(ロビン・ハーディ)
これは久しぶりにオールタイムベスト審議委員会にかける案件が出てきたと思った!
うまくはない。それも込みで作っている可能性もあるが、技術は高くない。が、画面に映るものすべてが狂ってて面白いし、間違いなく好きだ。
それで思った。対象があれだけ常軌を逸しているなら、下手に欲を出してテクニックを見せたら失敗するのではないかと。だから、ベストな表現方法を選んでいるのだ。
内容は、敬虔なクリスチャンの警察官がスコットランドの孤島に行方不明の少女を探しに降り立つと、どうもその島では異教が未だ生き残っているらしく、島民はなにか隠しているようだ、という「俺以外誰も信用できない」系スリラー。
ただ、演出的には明るい場面が多く、ホラー的な画面はほとんど出てこない。しかも音楽もケルト民謡で、一部ミュージカル的な場面もある。こういった特異性だけでも僕はこの映画を支持したいところだけど、やはり終盤の展開が見事。
祭祀の様子が普段の生活からあまりにも逸脱していて、観ていて「ああ、こりゃ話通じないわ」という気分になってくる。けれども、確かに共感していたのは警察官のはずなのに、観ていてこんな独特な祭祀もいずれ失われてしまうのか、惜しいなという気分になる。
終盤の流れ、確かに主人公に感情移入してきたはずなのに、あのウィっカーマンの姿と、ハッピーなダンスを観ていると、ひょっとして主人公のほうが悪だったんじゃとも思えてくる。そのあたり、やはり映画として映えているほうが正義なのかと思わせられると同時に、そういった自分の心の動きにちょっと恐ろしいものも感じた次第。なんていうか、藤子・F・不二雄の「ミノタウロスの皿」に近いものも感じますよね。
それくらいさ、まあ、奇しくもこれを書いている時期のちょっと前にスコットランド独立投票があったんだけど、なんていうか、古代の異教が生き残ってきた姿、それゆえの島民により自己完結している姿。ガラパゴス的に発展してきたからこそ異常さゆえにもはや理解が届かない者として、不謹慎ながら楽しめる祭祀の姿とか、なんていうか、味わったことのないものだった。
あと、童貞の方や童貞マインドを保持している方は観たほうがいいかもしれない。
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ミノタウロスの皿 (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)
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