OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

恋の渦(大根仁) ★★★

(@桜坂劇場
 僕にとっては怖い映画でした。町山智浩が見たら『トラウマ恋愛映画館』に入れるんじゃないのだろうか。観た後はタイトルの「恋の渦」という言葉が皮肉に響く。
 あらかじめ言っておくと、とても評価が高い作品だし、ぼくも完成度の高さは認めるが、しかし鑑賞中の感情はどちらかといえば「不快」に近かった。それも意図してのことだけど。ので、賛否両論分かれる可能性もある。おそらく、富田克也監督の『サウダーヂ』('11)に発想を得ているのではないかと思われる。神の視点で登場人物ごとのエピソードをシャッフルしつつ、その残響により効果を与える手法。しかも、この作品自体に大根監督の前作『モテキ』('11)の残響があって、それがより効果を挙げている。
正直に言えば、恋愛したくなくなる作品だった。この映画の中で描かれる「恋愛」は、カテゴリー付けのために行われるものであり、性欲を別の言葉で言い換えたものであり、弱き者の依存先である。その循環を「恋の渦」という。この作品は無名の役者さんを使っていることで、この日本のどこかの一室で起こっていることだという気にさせられる。もっと言えば、翻って『モテキ』の世界でさえ恐ろしいものに思えてくる。幸世が走り回っていた東京の同じ空の下には彼らが盛り上がらない鍋パーティーをしていたのかも。ここの人たちは恋に縋らざるを得ないまま成長できず「恋の渦」の中をぐるぐる回る。
 だから終盤は、誰が真っ先に「恋の渦」から脱することができるのかというのが面白さになっていった。そもそも自分がその中にいることに気づかない者、脱したと思いこんでいる者、ひょっとしたら脱することが出来たかもしれない者。様々な人が出てくる。この作品は結構初めの時点で梯子が外されるんですね。この人物はモテないのだからここを共感処にできるはずだ、という部分が。だからこそちょっと胸が苦しくなったのかもしれない。