OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命(デレク・シアンフランセ)

 デレク・シアンフランス監督の前作『ブルーバレンタイン』もかなりよかったのだけれども、あの映画で倦怠期のすれ違いを描いていたが、さらにスケールが拡大した本作ではより普遍的な方向に進んでいたように思う。シアンフランス監督は、感情のドラマをきちんと動きや構図として画面に写し取るので、見ていて飽きないと言うか、すごく贅沢な気分になる。満足。

 これもある種の「渦」の物語。どの段階でこの負の連鎖に入り込んでしまったのか。それを抜け出す手段はあるのか。どうしても考えてしまう。シアンフランス監督はあくまでも「人」にその「渦」の中心を見ていると思った。本来なら正しくない行動を選びとってしまう「人」の厄介さに。

 これはないものねだりかもしれないけど、時折台詞で土地の呪縛も語られるのだが、あまりNY州スケネクタディという街が怖いという印象はしなかった。このあたりは『ペーパーボーイ』に軍配が上がるかな。

 その代わり、人の怖さはとにかく緻密に描いている。ライアン・ゴズリングのタトゥーに塗れた姿は彼が壮絶な人生を歩んできたことをなによりも説得力をもって示す。ただし、ライアンの甘いマスクがマイナスになっている部分もあると思ったが。あと、『アニマル・キングダム』の好演が記憶に新しいベン・メンデルソーン。彼が登場するだけで裏社会めいた不穏な雰囲気がする。レイ・リオッタも『サムシング・ワイルド』を念頭に置くとその怖さが増して見える。あとは、やはりデイン・デハーンの暗い目は素晴らしい。この映画は視点が2回移り変わり、3者の視点から描かれる。ライアン・ゴズリングの視点とデイン・デハーンの視点に比べ、中盤のブラッドリー・クーパーの視点はちょっとインパクト不足だけど、この視点の移り変わり故のやるせなさが出ていてよかった。視点の移り変わりが脚本で言う三幕構成を指しているわけです。序盤のクライムアクション。中盤の警官汚職モノ。そして終盤の青春映画と、ジャンルが二転三転するダイナミズムがあって娯楽映画として楽しかった。その描き方によって何が浮き彫りになるのか。僕はこう考えました。

 結局、間違っているとわかっていたって修正が効くわけではない。そして、その根本の原因がどこにあるのか、どこまで戻ればいいのかわからない。それでも生きていかなくてはいけない。一種の諦念と開き直り。そんな後押しを感じた。

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命 [DVD]

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