わが青春のマリアンヌ(ジュリアン・デュヴィヴィエ)
松本零士にメーテルのインスピレーションを与え、早川義夫に「マリアンヌ」という名曲を作らせたのも納得の傑作。狂気の入れ子構造が見事だった。
この物語を牽引する人物は、すべて外界からもたらされたもの、つまり「転校生」なんです。だから、物語が進むにつれて、虚構には手を触れることもできないが、虚構からは何か深い傷跡を与えられるという無常観の強い構造が二重にも三重にも増して感じられる。それが私たちが虚構を必要とする理由にも重なる。一種のメタ構造を持った作品だと思います。だから、この作品において狂気や虚構と現実の境目は非常にあいまいで、それが青年期の感情にリンクしており、心の中の青年を刺激されて溜まらなかった。実はマリアンヌ(マリアンネ・ホルト)の登場シーンはそれほど多くない。それゆえ、彼女が映っていないシーンではその不在が影を落とす。このマリアンヌの登場シーンがまさに青年期に持っていたリビドーとか、そういったものがありありと思い出された。はっきり言ってしまえば、このシーンの心の震えで最後まで持たせているような映画だ。
あと、この映画になぜここまで感情をコントロールされるのかを考えると、撮影もさることながら録音がすごいことになっているのが大きい。森の音や嵐の音など、今の映画と遜色ないくらいの迫力がある。「トラウマ映画」との異名も納得、確実に傷跡を残す映画だと思いました。
- 出版社/メーカー: 復刻シネマライブラリー
- 発売日: 2013/10/14
- メディア: DVD
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