ガンモ(ハーモニー・コリン)
コリン監督作を観るのは2作目。竜巻によって疲弊した町を描く。中心になるのは、ちびでやせっぽちな青年と背の高い青年のコンビが色々と非倫理的なことを繰り返すだけで、ストーリーらしいものはない。猫好きは注意。
一応中心になる青年たちのエピソードの合間に、ウサギの帽子を被った少年や赤ん坊の人形を持ったおばさんが出てきて、ひょっとして狂人ではと思わせられる。ハーモニー・コリン監督の映画を観るのは2作目だが、この監督の特徴はひょっとすると、とてつもなく快感なシーンと、とてつもなく不快なシーンを相混ぜにしているところにあるのかもしれない。快感だったシーンというよりも、この映画の舞台となっている町はいわばディストピアで、なんというか、滅びの心地よさというか、一種メルヘン的な感触があり、かつオープニングでウサギ帽の青年が歌う童謡のように、音楽の力も大きい。ただ、思い返してみると、後半に行くに従って徐々に不快に捉えられるシーンが増えてくるんですね。これがハーモニー・コリンの評価が上がらないゆえんなのかもしれない。例えば、やせっぽちの青年が濁った湯船に浸かってスパゲティを食べるシーンなんてオエッってなったし。あと、後半に行くにつれて、前半で積み立てた情緒を崩すように音楽もポップなものからヘヴィメタルが増えてきたのも印象的。とはいえ、ここぞという時にロイ・オービソンの『Crying』がかかったりするわけだが。で、こういう、思春的なセンチメントを積み立てて、壊すというのは、きっとハーモニー・コリンの性格なのだろう。そしてそれは、この映画の舞台になった町を襲った竜巻にも重なる。
『スプリング・ブレイカーズ』もそうだったけど、ハーモニー・コリンの映画は観終わった後はそうでもないんだけど、しばらくたってから異様に印象的なシーンがフラッシュバックしてくるから恐ろしい。ハーモニー・コリンの監督映画は今のところキャリア16年で4本。レオス・カラックスほどではないにせよ寡作。たぶん一番視聴が難しいのは『ジュリアン』かな。さっきからレオス・カラックスとハーモニー・コリンの印象が重なるなあと思っていたら、カラックスがコリンの監督作に出演していたのもあるけれど、撮影監督がどちらもジャン=イヴ・エスコフィエだったことも原因か。2003年に亡くなったって、早すぎるよ。
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