ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!(アレクサンダー・ペイン)
とても面白かった。一時も飽きることなく見ることができ、アレクサンダー・ペインの優秀なストーリーテリングを堪能。
最初は複数の語り手が存在する作りに、これは奇抜かもしれないけど映画としてはどうだろうと思っていたんだけれども、改めて振り返ってみるとこの構成で他者の立場理解がスムーズに進む。その思うところが理解できないような相手の気持ちもわかる。素晴らしい構成。恐ろしいのは、主人公のやったところは何一つ同情できないのに、それでも気持ちはわかってしまうところ。実際に行動に起こすことはなくとも、優等生的な人物に対してあのような気持ちを持ったことは、やはりないとは言えない。連想したのはポン・ジュノ監督の『ほえる犬は噛まない』。あれもデビュー作だったことを考えると面白い一致があちこちで見られる。エンターテイメントとしておもしろかった。「けれども・・・」という、完成度としては文句ないにもかかわらず自分の中の闇を言い当てられた気まずさが混在する。それを「毒」というのだろう。この感覚、どこかでと思ったらあれだ。朝井リョウの小説『何者』。この二つ、今の「意識高い」系若者を取り巻く言説に投げ込んだら爆弾になりえる作品だと思います。
この映画の中では大きな挫折がふたつクローズアップされるんですが、その陰にひとつやはり挫折があるんですね。ただ、その挫折をした者は「確かに残念だったけどその代わりいいことあったしまあいいか」という感じで幸せそうなんですね。ここがこの映画の救い。
役者もみんなよかったな。やっていることがどんなに同情に値しないとしてもなんか肩持ちたくなるマシュー・ブロデリックの捨て犬のような顔立ちとか、天性のムカつかせ属性を持っているとしか思えないリーズ・ウィザースプーンとか。
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