OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『ザ・ギフト』

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個性派俳優として活躍するジョエル・エドガートンの監督作品『ザ・ギフト』はとても優れたホラー映画であり、社会の縮図を写し取ったような寓意性にも富んでいます。
釈然としない終盤の展開には「イヤミス」を感じた。

※ 以下、ネタバレします

学生時代にサイモン(ジェイソン・ベイトマン)の虚言により人生を台無しにされたゴード(ジョエル・エドガートン)は、地元に戻ってきたサイモン宛のプレゼントを繰り返します。
サイモンは気味悪がって距離を置こうとします。
サイモンは妻のロビン(レベッカ・ホール)と共に彼のパーティに招かれますがそこでゴードとの関係を絶つことを宣言します。一方、彼の妻ロビンはゴードへの仕打ちが堪えたのか、過去の神経症が再発し、家にゴードが浸入する幻覚に苛まれます。そうこうしているうちにサイモンには出世の話が出てきて、ロビンは妊娠します。ロビンはその最中、過去を調べていくうちに前述の事実を知り、サイモンへゴードに謝罪するよう言います。
サイモンはロビンの言う通りにしますが、彼の謝罪できない性格ゆえ決裂します。
その後、サイモンは自身の出世のためにライバルを罠に嵌めたことが発覚し失脚します。
その後、ロビンは出産。その頃、サイモンは家でゴードからのギフトを見つけます。


ここからがゴードの「復讐」は完遂に向かいます。

ただ、僕が思うのは、本当にゴードの復讐は達成されたのかということです。
これは、ゴードがどこまで意図していたかという点が重要になります。

サイモンはゴードのギフトと電話により、ロビンの宿した子供が本当に自分の子供なのか、ゴードの子供ではないのかという疑念が生じます。
これにより、ゴードはサイモンへ不安を植え付けるという復讐を完遂したことになります。

ただ、サイモンは競争思想に特化した人間であり、恐らくはそういった疑念を忘れて生きていく、自分すら欺瞞に包みポジティヴに生きていく人間だと思うのです。
サイモンがラストに絶望するのは、ロビンの視線によるものであり、彼女がサイモンの過去を知ったことや、失脚事件の影響によるところが大きい気がするのです。
もしサイモンの失脚やロビンの探索がなかったら、彼をあそこまで絶望の淵まで持って行けたかという気がします。あくまでもゴードは根が善良なため、サイモンをメンタル的に壊すことを志向しました。しかし、サイモンが追い込まれたのは、過去の行動を決算するような運命の巡り合わせがあったからであり、彼自身の復讐がそこまで効果があったのかといえば、疑問なのです。

僕はこのラストの展開に、ゴードのいじめられっ子として最後まで復讐を完遂できない弱さを見ました。あるいは、自滅を待てなかった彼が一線を越えてしまったという後悔を。そしてそれこそが、かつていじめられっ子だった自分の悲しみを重ねるところでした。