OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『お嬢さん』

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 韓国出身の監督パク・チャヌクの長編としては3年ぶりとなる作品。2016年製作(日本公開は2017年)。日本統治時代の朝鮮を舞台としたコンゲームものであり、女性同士による恋愛映画というジャンル分けが難しい作品。

 最初観たときの感想(そしてそれは今もあまり変わってはいないのだけれども)は、調子いいときの園子温みたいだなというところだった。良くも悪くも下品で、かと思えば先行文化に対する目配せも見え、いわゆる「アート」的な画面構成もあり、何より物語のグルーヴで引っ張っていくところ。この作品がほぼデビュー作だという使用人役のキム・テリの容姿などアイドルのような童顔で、ああ、園さんが使いそうだなという印象を持った。

 だから、この作品を肯定するか否かというのは、どこかで園子温的なものへの態度表明にも近い。

 私はそれに屈する。

 アジトや地下室を好んで描くのも両名によく見られる手法ですね。あと、アイドル的な容姿の女優に過激な演技をさせる処も近い。韓国の子役に日本語の卑猥な言葉を言わせる部分は倫理的な是非を問われる感じがしたし、私もその部分については若干よろしくない部分だと思った。
 で、美人女優による過激な演技も、戦前日本の再現も、アートな画面構成も、色本文化への目配せも、すべてまがい物でインチキだ。
 でも、このインチキさを二転三転する『テルマ&ルイーズ』('91)的な物語に載せられて見せられた時に、目を奪われてしまったことは認めざるをえない。

 結局、インチキなものにお金を出して鑑賞する人々の姿は劇中でも描かれ、それを批評性を呼ぶこともできるかもしれないし、そこは人によっては不満点となるべき部分なのかもしれない。

 この映画は、煙の向こうに消える女二人の姿で終わる。
 彼女たちの杜撰な計画をハラハラしながら見守りつつも、そのインチキに加担してきた、ほかならぬ観客としての私たちの姿をある人物に投影させながら。
 
 これは完全な敗北宣言だが、映画としての出来なんかどうでもよくて、あの二人には幸せになってほしかっただけだった。