OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

川本真琴「川本真琴」(1997)

 岡村ちゃんプロデュースでデビューした川本真琴の1stアルバム。
 岡村ちゃん作曲の「愛の才能」は歴史に残るデビュー曲だ。メロディも、岡村ちゃんじきじきに弾いたアコギも、アレンジもいいけど、それよりなにより歌詞。内容は、浮気をモチーフにしている。それも、された恨みとかじゃなくて、やっちゃってもいいじゃんって軽い感じ。別にそういった考え方を素直に肯定するわけじゃないし、やっぱり自分が浮気されたら傷つく。けど、そういったモラリスティックな世間一般の恋愛感に一石を投じるのも、時として音楽の役目になるんじゃないかな。1996年って、援助交際が社会問題化したりといった具合に、10代の問題というのが深刻化された時代だった。けど相変わらず世間一般の恋愛感は保守的だったし。そういった状況に誰よりも早く物言いを始め真の純愛を追求したのがたのが岡村ちゃんだった。けど岡村ちゃんの物言いは確かにコアなファンは呼応したかもしれないけれども、一般的な支持を得るには早かったのだと思う。逆に、川本真琴の場合はそういった時代だったからこそ支持を得たのだと思う。
 川本真琴のアルバムの歌詞カードを開いたときに感じるのはイタさだ。結構妄想も入っているし、多分聴く人が聴いたら受け付けない。ただ、ひとついえるのは、川本真琴は確かに世間一般のトレンディドラマ的な恋愛感に固執はしていないものの、ひとつになりたいっていう根源的な欲求に素直という意味で純度を増しているといえる。それがあの早口のボーカルと、「愛の才能ないの」(「愛の才能」より)なんていう天才的な言葉の乗せ方をもって高品質のポップスにしてくれているのだ。
 ベストトラックは「DNA」。全体を通して思うことなのだけれども、川本真琴はものすごい歌がうまい。それは、すこし細めの声自体に魅力があるのは事実なんだけれども、表現のつけ方が他の女性ヴォーカリストに比べて一線を越えている。主音域は中音域で、どちらかといえばアルトに近いのだけれども、この曲のサビの高音域に行った時の息混じりな歌い方がエロチックでたまらない。ジャケットやPVなどを見る限り川本真琴って一見サバサバした女性に見えるけれど、初めて川本真琴を聞いたとき僕が感じたのはなんだか知らないけれどエロっぽい音楽だということ。たしかにその後、ヒップホップとかで表面的にエロい音楽は聴いたけれども、川本真琴のエロさは別種な気がする。それは前述のとおり、歌詞と歌い方に起因しているのだろう。
 川本真琴って真の意味で代替がきかない歌手だと思う。わずか2枚しかアルバム出さないで現時点では表舞台から消えてしまっているというのも悲しすぎる。そろそろ復活してほしいな。

川本真琴

川本真琴