OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

加納朋子『無菌病棟より愛を込めて』

 ミステリ作家よる白血病闘病記。非常に面白く、かつためになる本だった。

 まず感じるのが、死のふちという明らかに人生の一大事において、それでも記録を残すという意思、かつ、こういった時でも自身を客観的に見る目を失わない作家的体力。そして家族たちのサポート体制の強さだ。

 おそらく加納さんの例は相当運のよいケースとは思うが、それでもいかにつらい経験だったかは、その客観的かつユーモラスな筆致ゆえに伝わってくる。むしろ、ユーモアを忘れない好人物であることが文体から伝わってくるからこそこの人物は信頼できると思わせられるというべきか。この書物で最後に残るのが「希望」であることも嬉しい。世の中、斜に構えているやつの方が本質を捉えているように見えるけど、そこに愛がなければ、希望がなければなにもない。死に瀕した時に大事なのは愛と希望だと言い切ってしまいたい。