ダークホース〜リア獣エイブの恋〜(★★★★☆)
解説
「ウェルカム・ドールハウス」「ハピネス」などで知られる鬼才トッド・ソロンズが、オタク青年の恋の行方をシニカルに描いたドラマ。父親が経営する会社で働く30代の独身男エイブは、フィギュア収集が趣味のマザコンオタク。そんなエイブが、友人の結婚式で出会った女性ミランダに一目ぼれし、猛烈なアタックを開始。念願かなって付きあうことになるが、ミランダはある重要な秘密を隠していた。不安にかられたエイブは次第に妄想に襲われ、現実との境界線を見失っていく。主人公エイブ役に、TVドラマ「LAW&ORDER」のジョーダン・ゲルバー。ヒロインのミランダ役は「ストーリーテリング」のセルマ・ブレア。(ダークホース リア獣エイブの恋 : 作品情報 - 映画.comより)
トッド・ソロンズの映画を見るのは初めてだったが、確かにこれは問題作とされるものわかる。
アメリカの低予算映画らしく、静かでセンスのいい演出と、夢と現実の境目が見えなくなる感じがとても素晴らしい。
だが、語られている内容。これは猛毒ですよ。
フィクション上の人物なのであえて言わせてもらうが、エイブがこの世に生まれてきた意味はいったい何?
どんな人間にも生まれてきた意味があって、他者の役に立って生きていくものだと思ってきたが、この映画を見た後だとちょっとわからなくなる。
しかも、映画としての妥協点としてイケメン俳優に演じさせるならともかく、ハゲでデブという正直言って目も背けたくなる容姿。
はたして、エイブにどう救済を与えるべきだろうか。
エイブがどこから間違ったのかがこの映画では書かれていない。
ミア・ファロー演じる母親がスポイルしたであろうことは容易に想像つくものの、同じ親に育てられた弟は医者として成功しているわけだし。
じゃあ、『ザ・ファイター』('10)のマーク・ウォールバーグみたいに誰かから自分をそっくりそのまま受け入れられることで成長するのかといわれたら、その方向にはとんでもない落とし穴が待っているし。
エイブというキャラクターは何かハードなことが起こると「俺は悪くない!」と開き直る性格で、それは表には出さないものの自分の中にも確かにあるわけで、見ていて痛いのは確かだった。
で、最後まで来て明るい歌が皮肉のようにも響くのだけれども、これは結局反面教師として見るべき作品なのだろうか。いや、でもここまで目をそらしたくなる人物に84分つきあったあとに、それでもおさらばする時には同情とも憐憫とも侮蔑とも違う、なんか変な寂しさが沸き起こったのは事実。
これがうまく言い当てられたらいいんだけどね。
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