OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

風と共に散る(ダグラス・サーク)

 これは三宅隆太監督が言うところの「心霊映画」。なんせ冒頭から風でカレンダーが逆にめくれるところから始まっている。この部分のアニメーションが不気味でよかった。ほとんどアバンタイトルの部分はゴシックホラーの要素もある気がする。

 この時期(1950年代)ハリウッドのカラー映画の独特の色合いが好きだ。ワイルダーとか。その色彩は現代人の僕にはむしろ穏やかなファミリー映画の心象風景と同化していたのだけれども、ここで繰り広げられる感情のドラマは恐ろしいものだった。物語を額面通り受け取ろうとするとすぐ躓く作品。実はこの映画の真の主人公はハドリー兄妹ではないか。物語の発端は彼らとは別のところで始まるけれども、いわゆる彼らの転落と救済を巡る物語として見ることも可能か。つまり、ロック・ハドソンローレン・バコール口説くことでハドリー兄妹はそれまで無意識に押し込めてきた何かが顕在化して精神を病んでいくような印象を受けた。それは彼らが過去に妄執していたからであり、いうなれば彼らは幽霊なのかもしれない。特に、ロバート・スタック演じたハドリー兄はほとんど『エル』(ルイス・ブニュエル)の主人公像と一致する。あとは、この前『塩田明彦の映画術』を読んだからかもしれないけれど、ロック・ハドソンが台詞をしゃべる際には必ず複数の動作を同時に行っているところが印象に残った。