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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

おもひでぽろぽろ(高畑勲)

 なんだろうな、これは。自分の中では、いいところとすんなりと呑み込めないところが混在している映画という印象で。

 まず、日常の動きを再現するために細かいところまで気を配った動画が素晴らしい。情報量の多い動きによって、絵に命を与え、観客にとっては架空の過去を実在感のあるものにしている。これは間違いなく偉業だと思う。タイトルから連想されるように、大林宣彦作品のようなセンチメンタルを感じさせる。旅と追想が対をなす構成は大林作品にもよくみられるし。僕がこの映画のもっとも素晴らしいと思う部分は、時代性を固定しつつもノスタルジーを普遍的なものへ昇華しているところ。一方で、そういった旅と追想が対をなす構成の作品として異端なのはこの二つの間に空白があること。例えば、その場所と追想が連動しているわけでもなく、また追想がそれを思い出す者の「今」に近づくわけでもない。だから、この映画において実は旅と追想というのはまったく連動していなくて、結局現実から飛躍できていない僕などは、「本当は主人公が思い出にとらわれたままなんじゃ」とシニカルな見方をしてしまうのだけれども、おそらくそれが唯一の解釈じゃない。映っているもの自体はさわやかなのに、なぜか胸にいろんなものがつまって吐き出さなくてはならないような気持ちにさせられた時点ですごい映画だと思います。

 ただ、ちょっとだけ『國民の創生』やレニ・リーフェンシュタールの映画をめぐる問題を想起させられたんですよね。つまり、技術的に優れているからすんなり入ってくるけど、実は結構危険思想じゃないかという。他の作品でも感じるけど、高畑勲の持つ自然観はちょっと屈託がなさすぎて、うーむ、これでいいのだろうかと思わせられる*1。ラスト、画面に映っているものは感動的ですらあるんだけど、でもお話の流れとしては受け入れがたい。でも、どこかで今の自分を弁護したいという気持ちからそう思ってしまうのかなという疑念もある。今後もこの作品に対する態度を常に自己参照していきたいと考えております。

おもひでぽろぽろ [DVD]

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*1:Gガンダム』の東方不敗マスターアジアに近いような気がする。