東野圭吾「容疑者Xの献身」
東野圭吾の直木賞受賞作。2005年出版。
白夜行を読んだときも思ったが、この人の理系ならではの構成力には頭が下がる。絶対思いつけないし、いくら考えをめぐらせても東野圭吾の掌中にある、そんな気がする。
トリックについては触れられないので、レビューを書くのは難しいのだけれども、東野圭吾は比較的書きやすい、というより語りやすい。なぜなら、人物をちゃんと描いているから。
石神という人物の整然とした考え。その友人湯川の、同じく理系でありながらどこか柔軟性を持ったところ。そういった性格を持った個々人がいてこの事件が起こり、このドラマが生まれるのだということが説得力を持っている。登場人物はミステリーを動かす駒ではなく、それゆえに「歯車」という言葉に関して複雑なのだけれども。
東野作品の立ち上がりはおとなしい。しかし少しずつ波が立っていって、大波が起こり、大波が収まる頃にはその波の与えた影響を知る。
トリックには驚いた。多少やりきれなさの残るラストではあったけれども、説得力のある展開だった。東野作品はやめられない。
86/100
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/08/25
- メディア: 単行本
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