OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

東野圭吾「容疑者Xの献身」

 東野圭吾直木賞受賞作。2005年出版。
 白夜行を読んだときも思ったが、この人の理系ならではの構成力には頭が下がる。絶対思いつけないし、いくら考えをめぐらせても東野圭吾の掌中にある、そんな気がする。
 トリックについては触れられないので、レビューを書くのは難しいのだけれども、東野圭吾は比較的書きやすい、というより語りやすい。なぜなら、人物をちゃんと描いているから。
 石神という人物の整然とした考え。その友人湯川の、同じく理系でありながらどこか柔軟性を持ったところ。そういった性格を持った個々人がいてこの事件が起こり、このドラマが生まれるのだということが説得力を持っている。登場人物はミステリーを動かす駒ではなく、それゆえに「歯車」という言葉に関して複雑なのだけれども。
 東野作品の立ち上がりはおとなしい。しかし少しずつ波が立っていって、大波が起こり、大波が収まる頃にはその波の与えた影響を知る。
 トリックには驚いた。多少やりきれなさの残るラストではあったけれども、説得力のある展開だった。東野作品はやめられない。
86/100

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身