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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴りやまないっ('11/入江悠)(★★★★☆)

2012/1/4

DVD



 僕は神聖かまってちゃんの『ロックンロールは鳴りやまないっ』という曲に3回泣かされている。 

 1回は原曲を聴いた時、2回目はドラマ『モテキ』で満島ひかり演じるいつかちゃんが唄っているのを聴いた時、3回目はこの映画で。



 神聖かまってちゃんというバンドは内向きのコミュニケーションを極限まで突き詰めた結果、向こう側まで突き抜けたような、そんな印象を受ける。このコミュニケーションの指向性が『ソーシャル・ネットワーク』(’10)のそれに通ずるというのは言いすぎかな? そもそもこの映画の存在が、動画共有サイトをスタート地点としたバンドがスクリーンに乗るというひとつの価値の転覆の証左に他ならないのではないかと思う。

 ここに出てくる登場人物たちというのは、結果的にそういった内に向っていくコミュニケーションを選ばざるを得なかった人たちなんです。例えば、成田美知子(二階堂ふみ)は将棋というマイナーな世界を選びとらざるをえなかったわけだし、飯島かおり森下くるみ)はシングルマザーという道を選びとらざるを得なかった。神聖かまってちゃんマネージャーの劒樹人だって、結果的には神聖かまってちゃんの行く道を内へと向かわせるわけです。

 そして、もうひとつ面白いと思ったのが、この映画の登場人物たち、特に前述の3人は、この短い上映時間にも関わらず、抱えている悩みが複数あるんです。

 結局、僕らが生活している中で抱えている悩みというのは1つだけでは済まない。あの問題が解決したと思ったらこの問題が立ちあがると言った具合に。それでも、そんな悩みをひと時だけでも忘れられる瞬間があればいいのかもしれない。そんなことを思いました。

 特に終盤に差し掛かるにつれてエピソード感を行き来するタイミングが短くなり、そしてあの曲になだれ込むところ、やっぱりあの曲には泣かされてしまうわけです。

 明確に「神聖かまってちゃん」という実在のバンドを中心に据えているわけで、若干の宗教臭さを感じなくはなかったのは確かだけれども、それでもこういった内向きのコミュニケーションが伝播していき、人の心を動かす様は、スクリーンの向こう側にもやってくるのが感じられました。(それだけに、「神聖かまってちゃんの音楽に触れたけれども、どうも乗り切れなかった」という人についても描写されていたらなおよかった。保育園の先生の片方とかそういった役割があってもよかったのでは?)



 不満点としては、やはり映像にもうひと工夫があったほうがいいかなと思うところがみられたところ。優れたシーンもあるけれど、凡庸なシーンもあるので、逆に際立ってしまう。あと、お世辞にも演者さんの演技は上手いとは言えない。これはストーリーが進むにつれて慣れてくるけれども、最初は若干戸惑ったのも事実。



 けれども、個人的には神聖かまってちゃん加点があるし、二階堂ふみ加点がある。

 特に二階堂ふみ。こういういい方は失礼かもしれないけれど、僕は満島ひかり多部未華子のいいところを合わせたような女優さんだと思う。本当に、ひとつの表情に2つも3つも情報を入れているように思えて観ていて飽きなかった。