OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

謀殺のチェス・ゲーム/山田正紀(角川書店)

 昭和51年に出版された山田正紀のアクション小説。初めて読みました。

 まず、文句なしに面白い。基本設定としては行方不明となった軍用機・PS-8の奪還を巡るストーリーで、自衛官であり新戦略専門家である宗像と、彼の同僚であり略奪事件には塙産業の参謀として参加している藤野の対立を巡るドラマが縦糸となりつつも、暴力団組長を狙撃した若者・川原とその恋人の逃走劇や、自衛官側の立花と塙産業側の佐伯の、強敵(とも)的な関係性などが、北は北海道から南は沖縄まで繰り広げられていく。

 はっきり言ってしまえば荒唐無稽なお話だ。ただ、その荒唐無稽さが魅力になっている。『太陽を盗んだ男』(’80)を連想させる部分もある。

 欠点といえば、これは逆に楽しめた部分でもあるんだけれども、当時とは情勢が大きく変わっているため理解しづらい部分が出てきているところだろうか。いわゆる風化している部分。とくに、現在では国鉄(現JR)のストが行われることもなくなってしまったため2012年の今読むとそこはちょっと呑みこみづらかった。あとは、いくらなんでもキャラクターが類型的すぎるでしょとも思った。そのわりにキャラクターの性格描写に際し、語り手がしゃしゃり出すぎている感もある。

 ただ、後者に関しては、これは昨今におけるライトノベル大塚英志言うところのキャラクター小説の特徴でもある。ので、ラノベ好きにはオススメです。

 また、全体を通して稚気を捨てられない大人たちが一種の「ごっこ」遊びに興じていく様はペキンパーの映画のようでもあった。このあたり、僕にとっては町山智浩さんの文章などを通して『映画秘宝』的なニュアンスとして受け取ってきたのですごくうれしかった。特に、誰が生き残ったかを考えていくうちに、このニュアンスにこめた意味がわかってせつない読後感を残す。『映画秘宝』読者にもオススメです。

謀殺のチェス・ゲーム (ハルキ文庫)

謀殺のチェス・ゲーム (ハルキ文庫)