OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜』(★★★★★)

 ほぼ無名キャストと監督の作品ながら、サンダンス映画祭で喝さいを浴び、主演のクヮヴェンジャネ・ウォレスはアカデミー主演女優賞に最年少でノミネートされた。監督のベン・ザイトリンはぼくと2つしか歳が変わらなかった。


 作品の感想、とてもよかったです。
 精神分析的に言えば、幼少期とは世界と自分が未分化の状態であり、それが分化され、個としての自分を形成していく姿が映像として描かれている。
 自然と文化の対立を描いているけれど、かといって盲目的に自然を賛美しているわけじゃないところがいい。嵐のシーンの音響は本気で怖かった。
 あと、16ミリフィルムで撮られたざらついた画面もテーマに則していた。それゆえ、ハッシュパピーの見ている風景が実際にあったことなのか、ちょっとした戸惑いを覚える。それが、彼女がまだ世界と未文化の状態にあることを再度示す。そして、分化していくことこそが成長であることも。
 極めて真っ当な通過儀礼の話だ。画も決まりまくっていた。最後にほとりにたたずむハッシュパピーを見ているのは誰の視点なのだろう。


 あとは、たしかにジブリからの影響を感じた。トトロのように、子供の主観を映像として表現したり、予告編やジャケットでも使われているが『もののけ姫』('97)オマージュが見られる。
 ただ、『アバター』('09)のような、というよりも『パンズ・ラビリンス』('06)のような引用の仕方だった。
 要は、厳しい現実を理解するすべとして、ジブリ的な引用を使っているわけです。基本、ジブリは美しいものだけを描いているわけで、デルトロやベン・ザイトリンは描かれていないが故の残酷な現実を見てとったのかもしれない。