OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『抱きしめたい 真実の物語』(塩田明彦) ★★★☆☆

 レンタルBlu-Rayにて鑑賞。
 結婚式で流されるビデオを豪華にした印象。こういうと貶しているように思われるかもしれないけど、基本的に端正で時にギョッとするシーンも入れ、かつ恋愛の普遍的な部分を時に辛辣に描いていたと思う。
 よく恋愛映画にありがちなんだけど、恋愛を通してその人物が何らかの影響を受け取ったことを示す際に、例えば仕事等で大きな決断を行うというパターンに逃げなかった点を評価したい。錦戸はこの映画に描かれた出来事が起きる前も後もバスケットボールをしているし、北川も交際により状況が変わったわけではない。でも、実際そんなもん。あと、地元の連帯感のリアルな感じとか、地方の結婚適齢期のリアルな感触が再現されていて、そこを評価したい。
 それと演出。予告編でも出てくるけれど、回転木馬北川景子が乗るところ。この二者は出会ったところから決して頭が揃わないんです。それで、抱きかかえられて車に乗せられるときに接近し、一度は向かい合って座ることで揃う。けれども、その後ある決断を迫られる時に揺れる。
 こういった心情に則した演出をいわゆる「難病モノ」映画でやっているというだけでポイント高いんですが、個人的にすばらしいと思ったのは、後半のビデオカメラ。ちょっとモキュメンタリー風に撮っていて、ここが生理的にざわつかせる効果を出していると思った。
 あのビデオカメラ、風吹ジュンの力ない声とかも怖いし、北川景子の演技が生まれたての赤ん坊のようでインモラルなものも感じるけど、一番怖いのは、女性と母親の関係性が極めて強固であるという事実が、あのスタンダードサイズの画面に閉じ込められている気がすること。このシーンの前に、まず錦戸と北川が風吹と向かい合って座っているところを長回しのフィックスで捉えている。最初は大型テレビを背景にし、次に大型テレビのある場所にカメラを置いて。そして錦戸がCD-Rを再生する。つまり一種ハネケ的な手法で観客を没入させている。で、ビデオ映像の本編が、昏睡状態にある北川を映し風吹の力ない報告の声が被さる(「でーす」の言い方が怖い)。で、北川が目覚め、リハビリに入る。言葉も不明瞭で、手足の動きもままならない。ここがさ、風吹と北川の閉じられた母子関係を再現しているようで居心地が悪い。そもそもこの親に会うシークエンスを友人の結婚式に参加したエピソードの後に出すあたり、軽い悪意があるのでは*1。ただ、こういった障壁の描き方、辛辣ではあるが広く観られるであろう恋愛映画でやることは確かに意味がある。その意味で誠実な作品。
 
 にしても今年北海道を舞台にした映画多い気がする。『抱きしめたい』『私の男』『思い出のマーニー』そして『劇場版テレクラキャノンボール2013』。

*1:彼らの覚悟の具合を測る意図?