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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『ジャージー・ボーイズ』(クリント・イーストウッド) ★★★★☆

2014年新作 movie

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2014/10/6@ミハマ7プレックス 

 クリント・イーストウッドの新作は、アメリカの伝説的なポップグループ・フォーシーズンズをテーマにしたミュージカルの映画化。
 80歳を超えて、未だに新しいジャンルに挑戦するイーストウッドには本当に尊敬の念しかない。この映画も新しいことをどんどん導入している。
 この映画を観たとき、「これははたしてミュージカル映画なのか?」とは思った。この映画で歌うシーンというのは、すべて出来事の延長線上で起きることであり、ミュージカル映画にありがちな現実からの飛翔というイメージはしなかったから。ただし、現実から飛翔するシーンは別の形で挿入される。それは、カメラに向かって語りかける方法。面白いのは、この語りを楽曲の途中で入れていること。つまり、ここで本来の唄とセリフの役割が逆転した、不思議なミュージカル映画が生まれている。
 また、この映画はミュージカルであると同時に、マフィア映画的側面も持つ。フランキー・ヴァリを演じたジョン・ロイド・ヤングの佇まいがどことなく『ゴッドファーザー』のアル・パチーノに近いものを感じたのがその理由かもしれない。 あと、家庭をクローズアップするところなど『グッドフェローズ』に近いものを感じた。ある程度成功した人間の家のインテリアにありがちなダサさ、これも『グッドフェローズ』を観たときに感じたけど、一種の退廃するアメリカを象徴するものだと思う。
 アメリカのロックの殿堂ミュージシャンの屋内ステージって、ブルー気味の照明とかどことなくダサい感じがするんだけど、それにも新しい意味を持たせてしまうところが、映画の面白さだなと感じた。
 うまくまとまらないのだけれど、序盤はまさに「最近のイーストウッド!」といった感じの抑えた色調が光るのだけれども、物語が進み、フォー・シーズンズの面々にとっての青春が過ぎ去るにつれて、色調が変わっていったような気がした。
 中島らもは「バンドというのは政治である」と言った。すなわち、それぞれのエゴがぶつかり合う場であると。年をとってバンドが再結成するのも、各々が丸くなり許しあえるということなのだろうなと、この映画を観たときに改めて思わせられた。
 ただ、このシーンにもまた疑問が首をもたげる。「はたしてこれは本当にハッピーエンドなのか?」。最近のイーストウッド映画はあまりエモ―ショナルに盛り上げないこともあってか、『インビクタス』がそうだったけどハッピーエンドでもハッピーに見えないところがあるんですね。これも、ラストで確かに丸くなったけど、問題のあの人物はあまり変わっていない。
 ただ、イーストウッドすごいと思ったのは、そこからエンドロールで、まるでこのカタルシスのためにずっと溜めていたんじゃないかというくらいのサービス精神を発揮するところ。ちゃんとおみやげを持って帰ってもらう。粋です。
 巨匠の手堅い仕事ぶりを堪能しつつも、ちゃんと広い訴求性を持った映画だと思います。いろんな切り口があるので、他の人の感想も読んでみたいので是非劇場で。