劇団ひとり「陰日向に咲く」
芸人、劇団ひとりの作家デビュー作。
あー、これで泣いたとか言っちゃったら底が知れたとか思われちゃうんだろうな。底知られついでに言うと、今まで活字本で泣いたことがあるのは、「東京タワー」と重松清のナイフとこれだけだ。
だけどさ。この作品の泣きの力は素晴らしいものがあるよ。さすが芸人と言うべきか、どんな風に表現したら多くの人を泣かせられるかというのを知っている気がする。
さて、いまやその傾向もひと段落した感はあるけれど、「泣ける」話がブームだ。だけど、いわゆる「泣き」がブームになるというのは、ぼくには少し怖いように思う。セカチューも涙そうそうもそうだけど、ある程度読者や観客に登場人物へ感情移入させて、その登場人物を、殺す。これって、確かにオーソドックスな泣きの手法ではあるけれど、ねえ。
さて、ぼくがこの本で泣いたのはラストもラストなのだけれど、最後でこの本に納められた5本の短編の繋がりが明らかになって、そして最後のとある台詞の回想、これですべての物語が繋がり、そして収まった。思うに、きっとその構成の美しさに涙したのだ。
きっと本当は本名の川島省吾の名前で出したかったんだろうな。
- 作者: 劇団ひとり
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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