OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

竹内真「風に桜の舞う道で」

 正直に言えば、かなりセンスのないタイトルだ。
 内容も、あまり突出したところはみられず、予備校寮である「桜花寮」の日々は楽しそうだな後は思うし、一人一人のキャラクターの掘り下げもなかなかだとは思うけれど、そこに流れる思想は良識を抜け出してはいない。未成年でタバコを吸うことや酒を飲むことだって、世間一般の常識から大きくはみ出したほどの悪事ではない。バブルのころに青春を送った人々の記録といえば態はいいかもしれないけれど、そこまで批評性にとんでいるわけでもない。
 けれど、ぼくは中学生のときヤングアダルトの作品群をよく読んでいた。「ハローによろしく―若葉塾物語 (青春と文学)」とか「ハッピー・バースデイ」とか。「夏の庭―The Friends (新潮文庫)」「西の魔女が死んだ (新潮文庫)」のような傑作もあったが、ほとんどは断片的にしかおもいだせない。明らかにどのへんを対象としているかがわかっていて、本当におもしろくて読んでいたのかは疑問だけど、中学生日記のように正論にまとまっていくあの感覚が好きだったのかも知れない。
 あれから反抗期を迎えて、完治できなかった今は、小説などの作品に触れるとき自分の良識をどれだけ揺さぶってくれるかを考えるようになったが、それでもこの「正しい」感じがすきなのは残って居たのかもしれないと、そんなことを考えた。

風に桜の舞う道で (新潮文庫)

風に桜の舞う道で (新潮文庫)