『赤ちゃん教育』(ハワード・ホークス)
DVDにて鑑賞。
名作の誉れ高い作品なので構えてみたら、とんでもなくパンクでアナーキーな映画だと思った。格調高いところはほとんどなく、この映画から教訓らしいものを受け取ることは難しい。未だに「なんだったんだあれは?」という心境。
はっきり言って何が起こったかちゃんと把握できている自信はない。これは『ヒズ・ガール・フライデー』でもそうだったけれど、主演二人のマシンガントークによって展開される、いわゆるスクリューボールコメディ。単純な完成度としてどうこうよりも、途中「これどうやって収集つけるんだ?」と思わせるほどいびつな展開が見事。この映画が公開されるほんの4年前に『或る夜の出来事』でスクリューボールコメディが生まれて、わずかな期間でここまで達したのか。邪推だけど、スクリューボールコメディの傑作とされるけれどむしろアンチテーゼ的な作品と言うか、わかる人にわかる例えで言えば、『或る夜の出来事』とこの映画の関係性は、『ゾンビ』と『ショーン・オブ・ザ・デッド』の関係性に近いかもと思った。
例えば、河を渡るシーンがどちらにも出てくるけれど、『或る夜の出来事』ではそこに暗に一線を越えることが示されるのに対し、この映画では完全にギャグとして描かれている。そもそも、ヒロインの性格付けも、お嬢様で世間知らずという設定でありながら天と地ほど違う。
まあ、だってぶっちゃけ、キャサリン・ヘプバーン、綺麗だったけど、この映画の中の彼女はコロしたくなったし。ケイリー・グラントなにも悪いことしてないのに彼女からどれだけ迷惑をかけられているか。『或る夜の出来事』では互いに成長と言える要素がうかがえるのとは大違いだ。ただ、実に則しているのってむしろ『赤ちゃん教育』のほうじゃないかとさえ思う。誰も相手の話を聞かず言いたいことをまくし立て、それを受け入れることで関係が成立する。
- 出版社/メーカー: アイ・ヴィ・シー
- 発売日: 2002/08/25
- メディア: DVD
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