OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

A Crazy Little Thing Called Love(★★★★★)


2011/3/26鑑賞

桜坂劇場Aホール(沖縄国際映画祭)



「A Crazy Little Thing Called Love」はタイの青春映画。
 今自分評価迷っています。ひょっとしてタイのROOKIESじゃないのかという疑念は残りますし。
 早い話が、いびつではあるけれどもそこも魅力になっている、のか、いやしかしこのいびつさは許せない、のか。



 これも序盤はよかった。
 一昔前の少女マンガみたいなストーリーと、往年の角川映画を思わせる過剰な演出。そして、冒頭で登場したナームという
女の子が本当にきれいに変身していくさまの描き方はうまかった。
 私にとって「一昔前の少女漫画みたい」というのは褒め言葉です。
 ベタでありつつも、キャラクターの描き方がうまいという意味ですので。
この2010年という時期に現れた正しいアイドル映画であると同時に、優れたガールズムービーになっていた。
 特に、不細工な登場人物の描き方が作品の奥行きを増していた。イン先生を含め、まさに恋愛版「少林サッカー」なみの負け犬たちのレベルムービーとして最高だった。
 本当にもう、絶対にくっついてくれ、みたいな応援したくなる感覚がありました。
 やはりこの作品の魅力は、学生時代の感覚を皮膚的に蘇らせてくれるあの感じと、「負け犬」ムービーとしての強度、実際に変身するという説得力、
 それとギャグだと思います。
 ギャグに関しては、これも「一昔前」レベル。まあ、大林宣彦よりちょっとはマシじゃね?くらい。
 けれども、今日本って、ダウンタウン以降シュールに向かいつつあった中であえてベタに回帰しようとする笑いのポストモダン的傾向があると思うんですね。
 それゆえに、このベタなギャグの応酬は他の映画では見られないくらいにニコニコニヤニヤさせてくれたと同時に、このギャグって日本みたく一周していない
から、その強度は素晴らしいものがあるな、と実感しました。
 また、きっと各所で言われていることでしょうけど、主人公ナームの変身。これはまさに映画的説得力というものがあります。
 この一点だけでもマスターピースに成り得る強度を持っています。



 けれども、やはりいくらなんでも構成が不細工すぎるだろ・・・っていうのと(音楽のかぶせ方とか、後半特にひどかった)、チョーンの行動がどうしても許せなくてねえ。
 やっぱりベタすぎてちょっと観ている側が恥ずかしくなるんですね。
 前半の負け犬恋愛ムービーは文句なしなのですが、後半、つまりナームの変身後の構成が本当に悪いんですよ。
 すでにもう前半の過剰演出には慣れているはずなのに、後半は・・・。
 たぶん、もうくっつくだろうという安心感が映画への訴求力を弱まらせる、というのとは違うと思います。
 終盤は序盤に抱えていたテーマが自壊を起こしているんですよ(それでも『僕の彼女はサイボーグ』よりはマシだが)。
 あと、チョーン。あんたがはっきりしないせいでナームはあれだけ苦しんだんだぞ、と言いたくなってきます。
 そしてラストの音楽の被せ方が、これ、もうコントの域ですよ。
 あ、あと一点。卒業式のシーンで他の不細工3人のシャツに一つもメッセージがなかったのはあんまりです。
 なんだか、終盤でちょっと信頼できなくなってしまいました。
 学年についても矛盾があった気がするなあ。

 あと前半部分だって、やはり映画としての出来ではなく、アイドル映画としてとか少女漫画っぽさとか、そういった意味合いでの加点なので、万人へのオススメはできません。
 きっとこれから先、どうにか日本公開されてほしいと思いますし、色んな人の感想が聴きたいところではあるんですが、おそらくは酷評されるでしょうね。
 けだし、演出に関しては前半はあれでよかったんですけど、後半はソフィスティケイトさせていく必要があったと思います。
 まあ、この点は監督の力量が足りていなかったのかな、と思いつつ。

 ただ、きっとこれから先タイ発の傑作青春映画は、絶対出てくるぞ、という期待が高まりました。

(追記)後から思い出してみるとそのいびつさも含めて観ていて楽しかった気分にさせてくれるという意味では、正しい「アイドル映画」だったと思います。