OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

ワイルド7(★★☆☆☆)

2011/12/23鑑賞

@シネマQ



 1970年代の人気漫画の実写化。原作未読。

 レイトショーに近いこともあったのだろうけれども、10人以下の少ない入りで、年配のお客さんが多かったです。原作漫画を読んでいた方々でしょうか。

 

 序盤のバイクアクションや銃撃戦シーンなどは頑張っていると思いました。あとは、吉田鋼太郎演じる桐生という悪役の小悪党ぶりがかなりむかつく感じでよかったです。それと、コメディリリーフ的役割の要潤は(不必要なまでに)シリアスなドラマの清涼剤的役割を果たしていたかと思います。

 ただ、あまり観終わった後に残るものがなかったのも事実。



 まず、ワイルド7という設定が元犯罪者を集めた超法規的組織ということになるけれども、これはつまり、準自警団的存在といっていい。

 自警団を描くいわゆるヴィジランテ・ムービーを描くには、今がA.D.3年という事実を重く受け止めなくては。つまり、アフター・ダークナイトから3年。

 特にこの映画にはご丁寧にもコインで運命を決めるトゥー・フェイスをなぞったようなキャラクターが出てくるわけで。そのキャラクターの行動も観るからにトゥー・フェイスのそれより後退していてちょっと情けなくなる。

 だから、自警団と公的な警備組織の中間に位置するワイルド7には、この設定を活かしていろんなジレンマに切り込むことが可能だったと思う。

 もし、そこまで切り込むことを目的としていないのであれば、アクションシーンをもっと頑張る等の工夫が必要になる。

 僕は原作を読んではいないのでなんとも言えないけれど、孫引きで読んだ話だと原作はもっとホモ・ソーシャル的な要素が強い作品と聞く。 つまり、男子校的世界観の中で創り出された絆とか、そういった要素が強い作品だと思う。

 そういった要素がどうも排除され過ぎているきらいがある。だから後半のサクリファイスな展開が全然生きてこないのではないかと思った。

 

 そもそも、監督の羽住英一郎という方が男子校的世界観を出すことが出来ない人なんじゃないかと思う。

 ラストの展開は、あれ絶対男子の連帯感を出すことが命題の作品においてはやってはいけないことだと思うんだ。女性蔑視というわけではなく、この手の作品には男性のみで構成された集団だからこそ生みだされるグルーヴを再現する必要があるため、そう考えるのだ。

 ゆゆしき問題は、こういった男性的ホモ・ソーシャル世界観を描くことができない監督が、『逆境ナイン』『海猿』『おっぱいバレー』と男子校的映画の専属監督になりつつあることで、今回の『ワイルド7』でその違和感が最高潮に達した観さえある。



 ちょっとこういった漂白された男子校的世界観のほうがマスに支持されるという現実には、ちょっとゲンナリです。