リンカーン弁護士(★★★★☆)
2012/8/11鑑賞
@桜坂劇場Aホール
話題になっていた法廷ドラマ。
マシュー・マコノヒーはこれが当り役になるんではないだろうか。
まずオープニングタイトルが素晴らしい。
問答無用で「かっこええ!」と叫びたくなった。
そこから始まるオープニングシークエンスも素晴らしい。
マコノヒー演じるハラー弁護士の、勝つためには手段を選ばない狡猾さ、金を湯水のように使う一方高額の依頼に応じる弁護士版ブラックジャックともいうべきスタイル、そして、離婚歴など彼の背景などが実にこぎみ良く処理される。ここで早口のカンバセーションと情報処理の巧みさ(今回のメインとなる依頼を受けるときに歩きながら話を聴くところのカメラワークに顕著)より『ソーシャル・ネットワーク』('10)を連想した人は多いと思うし、またハラーの大金を思い切りよく使う感覚がクリストファー・ノーラン版バットマンのブルース・ウェインに通ずるものがあると感じた。
このオープニングで示されること。それは、今から現代的にアップデートした法廷ドラマをお見せしよう、ということだ。
非常に面白く見られたのだが、後半は普通の、ただし極上の法廷ドラマに収まってしまった気がした。
※以下ネタバレ
演出的には収まりをみせる終盤から後半にかけて顔を出すのは、弁護士という仕事の業である。
ぼくが今まで観た映画の中だと、検事が悪役で弁護士が善玉になることが多かった。この点をひっくり返し、どちらにもグレーさを加えた(その上エンターテイメントとしても面白い)のがこの作品の新しい所だと思う。
だが、ハラーはその清濁合わせ持つがゆえに受難にさらされる。
ここでは、彼が違法スレスレの行動を犯しつつも、その根本で守っている法の原則があることが示される。つまり、彼のはっきりとしたラインが見えてくるのだ。
彼をはめる相手も実に憎々しく描けていた。
つまり、彼が有能であればあるほど、自分の首を絞めていく様子が刻々と描かれる。そして、物事がひっくり返るタイミングが、一度私たちが希望を捨てた後というのが憎い。
ただし、終盤は回収のためのクライマックスがいくつか重なったためあまり見栄えがよくない印象があった。もう少しタイトに収めてもよかったかも。