OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

Syrup16g「coup d'Etat」

 厭世的な世界観で知られるシロップ16グラム(以下シロップ)が2002年にリリースしたメジャーデビューアルバム。僕が聞いた時期は昨日紹介した初恋の嵐とほぼ同じです。
 シロップの詩は厭世的で、かといってビジュアル系みたいに大仰になることもない。あくまで日常に起因しているし、ナルシシズムも、感じることは感じるのだけれども、客観的に自分のことを見ているなということも感じる。この厭世的だが日常的だというスタイルは、別にシロップの専売特許ではなく、日本ではフォークの時代からよく見られたスタイルだったのだけれど、シロップを聞いたときはすごく新しく感じた。なぜか?
 思うに、結局は詩を書いて歌っている五十嵐君の表現方法じゃないかな、って。UKロックに影響を受けた演奏スタイルはよくあるものだし。ただ、五十嵐君のとことん内省的で割と饒舌で観察眼にあふれた詩は、少なくともロックの世界では今までなかった。ブランキーはわりと外国の情景を織り込ませることで物語にしていたし、イースタンでさえも文語的にすることでどこか物語然としたところがあった。ピーズはかなり近いかもしれないが、とことん簡略化した表現はやはり異なる。ただ、この三者もシロップも根っこのところではつながっているのだとは思う。
 また、それらの詩を表現する五十嵐君の声にも惹かれた。乱暴な分け方かもしれないが、BUMP OF CHICKENの藤原君の声に似ている。藤原君の声をもっと暗くした感じ。歌い方は決して感情を高ぶらせることはない感じ。シャウトすることもあるけど、どこか突き放している、冷めてる。五十嵐君の声のイメージは、曇り空の都会だ。
 このアルバムが結局のところ一番好きだ。狂気的なところもありながら、一番わかりやすい形で表現されていると思うから。「神のカルマ」の、ラストに向けての盛り上がりはすごい。「バリで死す」のうつろなボーカルスタイルもよい。

coup d’Etat

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